Xiaomiが初の自社開発SoCに関する仕様を明らかにした。台湾TSMCの4nm「N4P」プロセスを採用し、ARM設計のオクタコア構成により性能と効率の両立を狙う。Cortex-X925などの標準アーキテクチャを用いたCPU設計に加え、Imagination Technologies製GPU「IMG DXT 72-2304」を搭載することで、従来と異なるグラフィックス戦略を示した。
本SoCの性能はSnapdragon 8 Gen 1と同等とされており、ハイエンド向けとしては慎重な出発となる。ただし、次期「Xiaomi 15」シリーズへの搭載が予想されており、今後の3nm展開に向けた布石と位置づけられる。米中間の技術規制が強まる中、Xiaomiの独自路線は業界地図に新たな緊張をもたらす可能性がある。
TSMCの4nm「N4P」プロセス採用と標準ARM設計が意味するもの

Xiaomiが初の自社製チップセットに採用したTSMC製4nm「N4P」プロセスは、Snapdragon 8 Gen 3と同様の製造技術であり、高い電力効率と熱制御性能が期待されている。これは米中間の半導体規制が厳格化する中、Xiaomiが確保した先進的な製造能力を示す材料である。同社は独自のCPUコア開発を避け、ARMの設計をそのまま採用することで開発リスクを抑えつつ、製品化までのスピードを重視した。
CPU構成は「1+3+4」の典型的なオクタコア構成で、Cortex-X925を筆頭に高性能・中性能・省電力の3層構造が用いられている。高負荷時の応答性と日常利用での省電力の両立を図る設計は、実績あるアプローチといえる。独自コアの不採用は技術的成熟の不足と見る向きもあるが、短期的には品質保証と製造の安定性を優先した戦略と読むことができる。
今後の独自アーキテクチャ開発への布石と捉えるならば、この第一歩は試験的であっても十分に意義を持つ。チップ製造の主導権を持つということは、Xiaomiにとって製品の差別化だけでなく、サプライチェーン主導権の確立という中長期的な価値にもつながる。
IMG製GPUの採用がもたらす市場への含意と挑戦
GPUにImagination Technologiesの「IMG DXT 72-2304」を選定した点は、XiaomiのSoC開発における最も特異な要素である。従来のスマートフォン市場ではMaliやAdrenoが主流を占めており、それらを避けた選択は一種の挑戦といえる。
動作周波数は1.30GHzとされ、Adreno 740と同等以上の性能を持つ可能性があるという。ただし最新世代であるSnapdragon 8 Gen 3以降のGPU群には及ばないと見られ、同世代内での競争力維持が課題となる。
この選択はARM設計に依存しつつも、グラフィックス面での個性を強調する狙いがあると考えられる。IMG GPUは過去にAppleの一部デバイスにも採用されていた実績を持つが、Androidプラットフォームでの展開は限定的であり、最適化やソフトウェア対応に課題が残る可能性がある。今後の開発スピードと互換性への取り組みが重要になる。
一方で、この採用によって他社との差別化を果たせれば、将来的なGPU独自開発やAI演算性能の強化につながる道が開かれる可能性もある。短期的なベンチマーク競争よりも、長期的な技術ポートフォリオの多様化と見ることができ、Xiaomiが市場内での役割を再定義しようとしていることの表れといえる。
Source:TechnoSports