Radeon RX 9070に対して上位モデルRX 9070 XTのBIOSをフラッシュすることで、最大3030MHzのクロックと317WのTGPを実現し、15〜20%の性能向上が確認された。この手法を実証したのは、ドイツのPC Games Hardwareフォーラムに所属するプロオーバークロッカー「Gurdi」氏であり、使用カードはAsus Prime Radeon RX 9070。

ULPSの無効化やランダムフリーズといった副作用も報告されているが、ベンチマークではXTモデルと同等、あるいはそれ以上の性能を発揮する場面も見られた。メーカーによるBIOS改変対策が進む中で浮上した今回の事例は、愛好家の技術力と探究心の象徴ともいえる。

RX 9070のBIOSフラッシュがもたらす性能向上の実態

ドイツのPC Games Hardwareフォーラムに所属するプロオーバークロッカー「Gurdi」氏は、Asus Prime Radeon RX 9070に対し、上位機種RX 9070 XTのBIOSを移植することで、性能の劇的な向上を実現した。

改造後のカードは、クロック速度が従来の2140〜2610MHzから2480〜3030MHzへと上昇し、TGP(総グラフィック電力)も220Wから317Wへと大幅に増加した。これにより、理論上はRX 9070 XTと同等、あるいは一部環境ではそれ以上のベンチマークスコアを記録するまでに至っている。

性能面だけでなく、電力供給の観点でも興味深い結果が報告されている。RX 9070は8ピン電源コネクタが2基であるのに対し、RX 9070 XTは3基を備えているが、改造後のRX 9070は2基構成のままでも要求電力に十分対応できているようだ。

さらに、ULPS(ウルトラ・ロー・パワー・ステート)モードが無効化されるなど、消費電力制御機構にも影響があることが確認されている。動作の安定性に関しては一部ユーザーがランダムなフリーズを報告しているものの、全体としてはベンチマーク完走が可能な水準にある。

この改造により15〜20%のパフォーマンス向上が確認されたことは、BIOSの持つ潜在的な制御能力を示している。今後、こうした技術的知見がオーバークロッカー間で共有されることで、さらなる応用や変化が生まれる可能性があると言える。

BIOS改造による制御緩和が意味する開発設計の柔軟性と限界

今回明らかとなったRX 9070のBIOS改造による性能向上は、基板設計の共通性を活用した一種の“仕様解放”ともいえる結果を生んだ。

RX 9070とRX 9070 XTはハードウェアレベルで非常に近似しており、XTのBIOSを移植するだけで、純正仕様では抑えられていた動作周波数や電力制限が緩和される点は注目に値する。これは、製品ラインナップの戦略的差別化がソフトウェア的制限に依存している側面を裏付けるものでもある。

一方で、こうした改造が実際に安定運用可能かどうかは、単なるクロックアップやベンチマークスコアの向上だけでは評価しきれない。ULPSモードの無効化による省電力性能の低下や、想定外の高負荷に対する長期的な耐久性の問題は依然として未解決のままである。特に法人用途やクリティカルな用途においては、こうした不安定要素はリスク要因となり得る。

加えて、メーカーが設ける性能制限は、単なる商業的差別化ではなく、長期使用に耐える熱設計や消費電力制御といった複合的な最適化の産物でもある。今回のようなBIOSフラッシュによる性能引き上げが成功したとしても、それは設計思想の一部を無視した操作であることは否めない。技術的な可能性を示した一方で、設計のバランスを崩すリスクも併せ持つ手法であることを示唆する事例といえる。

Source:TechSpot