AMDが開発中とされる「Ryzen AI Z2 Extreme」は、AIアクセラレーション用NPUを搭載したStrix Pointベースの新型APUである。CPUコアはZen 5とZen 5cを組み合わせた8基構成、GPUはRDNA 3.5世代の16ユニットを採用し、既存のZ2 Extremeとシリコンは共通だが、今回はNPUが有効化されている点が最大の違いとなる。

Z2シリーズには異なる世代のアーキテクチャを採用した複数モデルが混在しており、統一感のなさが混乱を招いている。AI対応によってCopilot+を含むWindows機能への対応は期待される一方、現時点でゲームや一般利用におけるNPUの明確な利点は示されていない。

AI機能の追加が実際の利便性向上に結びつくかは未知数であり、すでに消費電力の多いハンドヘルド機器においては、バッテリー持続時間への影響が今後の焦点となりそうだ。

NPU搭載Ryzen AI Z2 Extremeの構成と従来モデルとの違い

Ryzen AI Z2 Extremeは、AMDのStrix Point APUをベースにした新型モデルで、8基のCPUコアと16ユニットのRDNA 3.5グラフィックスを搭載する。CPUは高性能なZen 5が3基と、省電力向けのZen 5cが5基というハイブリッド構成となっており、これはノートPC向けに設計されたRyzen AI 9 HX 375とも一致する。このZ2 Extremeには、AI処理を担うNPU(Neural Processing Unit)が有効化されている点が従来モデルとの決定的な違いである。

現在市販されているZ2 Extremeは、同じStrix PointベースながらNPUが無効化されており、AI処理には対応していなかった。つまり、新たなZ2 Extremeはシリコン自体に違いはなく、NPUの有無だけで大きく意味合いが変わる構造となっている。Z2シリーズはこのほかにもZ2 Go(Rembrandtベース)やZ2(Hawk Pointベース)といった異なるアーキテクチャのAPUが同列に存在しており、ユーザーにとって仕様の把握が難解になっているのが現状である。

アーキテクチャ世代も異なるZ2シリーズを一括りに扱うことは、スペックを重視する層には混乱のもととなりかねない。今回のZ2 Extremeの登場で、Strix Point搭載機の性能と方向性は明確になるが、今後の製品選びにはシリコンの世代と構成を慎重に見極める必要があるだろう。

ハンドヘルドにおけるNPUの意義と課題

NPUの搭載によって、Ryzen AI Z2 ExtremeはAIアシスタント機能やローカルAI推論に対応可能な“AI対応デバイス”としての立ち位置を得る。MicrosoftのCopilot+をはじめとする新しいWindows機能を利用できる可能性が広がる点は確かに注目に値する。ただし、実際の使用シーンにおいて、どれほどのユーザーがNPUの恩恵を実感できるかについては慎重な判断が求められる。

多くのAIアプリケーションは現在もクラウドを通じて処理を行っており、端末内でNPUをフル活用する機会は限られている。特にゲーム用途では、NPUがゲーム体験に直接影響を与えるケースは現時点ではほとんど見られず、AI機能がプレイの質を劇的に変えるとは言い難い状況である。にもかかわらず、AI対応の名目でNPUを搭載することで、本体価格や消費電力への影響が発生する可能性がある点は軽視できない。

ハンドヘルドデバイスはそもそもバッテリー寿命が課題となりがちで、CPU・GPUに加えてNPUまでフル稼働となれば、電力消費はさらに加速する。性能の高さは魅力ではあるが、持ち運び前提の製品にとっては「どれだけ動くか」が最重要の指標となる場面も少なくない。AI機能の付加が実際の利便性に直結するかどうかは、ユーザーの利用スタイルや期待する機能により大きく変わると考えられる。

Source:PC Gamer