トランプ前大統領による新たな「解放の日」関税発表が半導体市場を揺るがす中、Nvidia株は4月7日の取引で3.5%上昇し一時的な反発を見せた。フィラデルフィア半導体指数(SOX)も2.7%の上昇となったが、市場には依然として強い警戒感が漂っている。

BernsteinのアナリストはAI需要に支えられたNvidiaの強さを評価する一方で、短期的な底値は見えないと警鐘を鳴らす。米国向けAIサーバーの多くが関税対象外のメキシコから出荷されていることが支えとなる可能性もある。

だがMizuhoやDeutsche Bankなど複数のアナリストは、半導体業界全体が需要の低迷と関税リスクで再び厳冬期に突入する恐れがあると指摘し、価格目標を一斉に引き下げた。市場の本格的な回復は遠く、不透明感が漂う状況だ。

Nvidiaの限定的な関税影響とメキシコ供給網の重要性

今回の米国による関税措置の中で、NvidiaのAIサーバーに対する直接的な打撃は限定的である可能性が示唆された。Bernsteinのアナリスト、Stacy Rasgon氏によれば、同社の米国向けAIサーバーの約60%はメキシコから出荷されており、USMCA(米国・メキシコ・カナダ協定)の枠組みにより現時点では関税の対象外とされている。また、約30%が台湾から供給されていることから、一部の影響は避けられないが、全体的な影響は他の企業に比して緩和される構造となっている。

さらに、Nvidiaの主要サプライヤーがメキシコ国内での生産能力を拡張しつつあることから、今後の供給体制においても一定の安定性が確保される可能性がある。これにより、関税リスクに対して一定の耐性を備えた体制が整備されつつあると考えられる。ただし、政治的変動が再び協定条件に影響を与える可能性は排除できず、現行の非課税状態が今後も維持されるかは不透明である。

米中テクノロジー競争の狭間で、Nvidiaが北米のサプライチェーン再編におけるモデルケースとなり得ることは注目に値するが、一時的な免除措置に依存した成長戦略には慎重な姿勢も必要とされる。

市場心理の悪化と半導体セクターへの重圧

フィラデルフィア半導体指数(SOX)は4月7日に2.7%の上昇を見せたが、それ以前の2日間にはトランプ氏の新関税発表によって業界全体が大幅な下落を強いられた。Mizuho証券のアナリスト、Jordan Klein氏は「半導体株に対する市場心理は最悪の水準にある」と述べており、これはPCやスマートフォン、自動車といった最終製品の需要低迷と連動している。もともと下半期に向けた回復期待があった中、唐突な政策転換がその期待を完全に打ち砕いた格好だ。

このような状況下では、NvidiaのようにAI需要を背景とした特定分野の強さがあっても、市場全体の下落圧力を打ち消すには至らない。Deutsche BankのRoss Seymore氏は、関税リスクの高まりを理由にカバレッジ対象の半導体株16銘柄の目標株価を一斉に10%引き下げた。その中にはNvidia、Arm、Broadcom、Marvell Technologyなど主力銘柄も含まれており、企業個別の好材料よりも外部環境の悪化が株価を左右している構図が明らかだ。

従来の業績評価ではカバーしきれない地政学リスクが顕在化した今、株式市場におけるバリュエーションやリスクプレミアムの見直しは避けられない状況にある。投資家にとっては短期の反発に過度な期待を寄せず、長期的な構造変化に注視する冷静な姿勢が求められる。

Source:investors business daily