ストックホルムに本社を置くSpotify株が、米中関係の緊張や景気後退の懸念が広がる市場環境で投資家の関心を集めている。4月7日には3.1%高の518.97ドルで取引を終え、過去12か月のパフォーマンスは上位3%に入る。
アナリストは、Spotifyが物品ではなくサービスを提供し、米国企業でないことから関税リスクを回避できると評価。また、手頃な価格のサブスクリプション型娯楽として不況にも強い特性を持つと指摘した。一方で、懸念材料として挙げられるのが高水準のバリュエーションである。現時点でのPERは85、2026年予想ベースでも50を想定する声があり、過熱感を警戒する見方も根強い。
米中関係の混迷下で注目集めるSpotifyの非米国籍とサービス構造

Spotify Technologyの株式が脚光を浴びている背景には、同社の非米国籍企業という立ち位置と、物理的商品を扱わないビジネスモデルがある。米中の関税問題が再燃するなか、Spotifyのようにハードウェアを介さず、グローバルにサービスを展開する企業は貿易摩擦の影響を受けにくい。Rosenblatt Securitiesのバートン・クロケット氏もこの点を評価し、Spotifyが現在の地政学リスクを回避できる数少ない成長株であると指摘している。
さらに同社は、経済が縮小局面に入った際にも一定の消費者需要が見込める「安価な娯楽」としての強みを持つ。音楽ストリーミングという業態は、過去の景気後退期においても比較的安定したユーザー維持率を示してきた。価格帯と利用頻度のバランスが良く、コスト意識の高まる局面でも契約を継続する傾向が強い。
とはいえ、こうした構造的優位性は長期的には競合の模倣を招く可能性も否定できない。コンテンツ力とユーザーエクスペリエンスの差別化をいかに持続できるかが、今後の成長軌道を左右することになろう。
高評価の裏に潜むバリュエーションの壁と市場の温度差
Spotifyの株価は4月7日に3.1%上昇し、518.97ドルで終値を記録した。その背景には、過去12か月のパフォーマンスが全銘柄の上位3%に位置するという実績と、強固な成長期待がある。しかし、クロケット氏が「唯一の難点」と述べるように、現行の株価は過熱感を帯びている。現在のPERは85と極めて高く、今後の業績成長がこの水準を正当化できるかには疑問符が付く。
一方、Bairdのヴィクラム・ケサバボートラ氏は、2026年の予想PERを50と見積もり、株価目標を700ドルと設定している。この数値はSpotifyの利益率改善と市場シェア拡大を前提としたものであり、ポジティブな見通しを維持するアナリストも一定数存在する。だが、現段階での収益性と市場環境を鑑みれば、この評価が市場全体と一致しているとは言い難い。
高い成長性を武器にしてきたSpotifyにとって、今後の焦点は、収益モデルの持続性と利益創出能力の裏付けである。株価の上昇が一過性の期待先行にとどまる場合、投資家の信認を維持することは容易ではない。市場の期待値とのギャップが開けば、反動も大きくなり得るだろう。
Source:investors business daily