トランプ前大統領が発表した対中「解放記念日」関税の影響を受け、アップル株が2営業日で15.9%下落、終値は181.46ドルまで後退した。ウェドブッシュ証券の著名アナリスト、ダニエル・アイブス氏は「最も深刻な影響を受ける米テック企業」とし、目標株価を325ドルから250ドルに大幅修正した。
iPhoneの90%が中国で生産されているアップルにとって、供給網の多様化は道半ばにあり、関税コストの上昇は価格転嫁と業績悪化の懸念を招く。アイブス氏は「10%の生産移転でも3年と300億ドルが必要」と指摘。企業各社は今期決算で業績見通しを控える可能性が高いとされる。
アップルの中国依存が直面する構造的リスク

トランプ前大統領が導入した「解放記念日」関税により、アップルの中国依存構造が改めて露呈した。ウェドブッシュ証券のダニエル・アイブス氏によれば、iPhoneの約90%、Macの半数以上、iPadの7割超が中国で生産・組立されている。アップルはかねてよりサプライチェーンの分散化を模索してきたが、実効性を伴った進展は乏しく、今なお中国に生産を大きく依存している実態は変わっていない。
アイブス氏は、中国以外への移転には10%分であっても3年と300億ドルのコストが必要と試算しており、現実的な移行のハードルの高さが明らかとなった。さらに、米国内での代替生産体制は短期的に構築困難であり、価格転嫁やマージン圧迫は避けがたいとの見方が強まっている。製品価格の上昇は消費者の買い控えを引き起こし、売上にも影を落とす可能性がある。供給の一本化が引き起こすリスクを浮き彫りにした今回の動きは、アップルにとって構造改革の必要性を突き付ける契機となるだろう。
株価下落の連鎖とテック業界のガイダンス放棄の兆候
4月第1週の取引でアップル株は15.9%下落し、終値は181.46ドルに沈んだ。これはドナルド・トランプ氏の対中関税政策による影響が市場に強く反映された結果である。特に、「関税アルマゲドン」と表現された今回の発表は、アップルを含むハードウェア企業にとって極めて深刻なコスト増要因となり得る。アイブス氏は目標株価を325ドルから250ドルへ大幅に引き下げたが、これは短期的な業績不透明感だけでなく、長期的な利益構造への懸念を映し出している。
加えて、メリウス・リサーチのベン・ライツィス氏は、Q1決算を控えたテック企業が今期の業績ガイダンスを提示しない可能性に言及しており、9.11やリーマン・ショック、コロナ禍に匹敵する「市場ショック」として関税問題を位置付けている。すでにx86サーバーやネットワーク機器で20%の価格上昇が報告されており、アップル製品にも価格改定が波及する公算が高い。価格上昇は一部ユーザーの購買回避を招き、特に価格弾力性の高い市場では需要喪失のリスクを孕む。企業の成長戦略が保護主義の波にどう抗うか、問われているのは単なる価格戦略ではなく、サプライチェーンそのものの再設計である。
Source:investors business daily