米テスラ株が8日、ニューヨーク市場で一時9.2%下落し217.41ドルを記録。これは3月に商務長官ハワード・ラトニック氏が「これより安くはならない」と明言した235.86ドルを大きく割り込む水準である。
急落の一因は、テスラ強気派で知られるWedbush証券のアナリスト、ダニエル・アイヴス氏が目標株価を40%以上引き下げたことにある。背景にはトランプ氏の通商政策による不確実性や、CEOイーロン・マスク氏の言動がもたらすブランド毀損があるとされる。
第1四半期の納車台数が期待を大きく下回り、2022年以来の低水準に沈んだことも市場心理を冷やした。中国市場での反発も強まる中、競合のBYDやNIOが優勢になるとの見方が台頭している。
予想を裏切った株価急落 Lutnick氏の「底値宣言」に現実が反論

3月19日、米商務長官ハワード・ラトニック氏はFox Newsで「テスラ株はもうこれ以上安くならない」と発言し、同日終値235.86ドルを“底値”と示唆した。しかし、4月8日の取引ではこの水準を大きく割り込み、一時9.2%安の217.41ドルまで下落した。発言直後にはCEOのイーロン・マスク氏も社員に対して保有株の維持を促していたが、市場はそれに反応せず、下落基調が続いた。
この背景には、同社の業績悪化に加え、マスク氏の政治的立ち位置がもたらすブランド毀損がある。特に中国では、マスク氏のトランプ前大統領との近さや一連の発言が消費者の反感を招き、BYDやNIOといった国内メーカーへの乗り換えが加速しているとみられる。こうした消費者心理の変化は、単なる一時的な調整ではなく、今後の売上基盤そのものを揺るがす可能性がある。
ラトニック氏の発言は政治的信任に基づく期待値の提示に過ぎず、ファンダメンタルズに照らした現実とは大きく乖離していた。今後、投資家は指導層の言葉よりも市場の実態と業績推移に目を向ける必要がある。
ブランド力失墜と中国市場の変化 Wedbush証券が突き付けた現実
テスラの強力な支持者であったWedbush証券のアナリスト、ダニエル・アイヴス氏は、テスラ株の目標株価を一気に40%以上も引き下げた。従来は将来性を楽観視していた立場からの転換であり、これは単なる短期的な相場感ではなく、構造的な問題への警鐘と受け止められている。アイヴス氏は、トランプ氏の関税政策によってグローバル供給網が揺らぎ、テスラが築いた競争優位性に大きな影を落とすと警告している。
特に注目すべきは、中国市場での立ち位置である。アイヴス氏は「関税による打撃に加え、マスク氏の言動が中国消費者の反発を呼び起こしており、BYDやXpeng、NIOといった競合企業への移行が進んでいる」と指摘した。テスラはこれまで価格競争力とブランド力でリードしていたが、現地感情の悪化はこうした強みを蝕んでいるとされる。
さらに、2025年第1四半期の納車台数は市場予測を下回り、2022年以来の低水準となった。これは実需の減退を如実に示すものであり、ブランドへの信頼が購入行動に影響し始めた証左とみるべきである。マスク氏個人の振る舞いが企業価値に直結するリスクが顕在化しており、経営者と企業ブランドの切り離しが難しい現状では、イメージ戦略の再構築が急務であろう。
Source:msn