025年4月7日、トランプ大統領が関税を90日間停止するとの誤報がSNSや大手メディアを通じて拡散し、ビットコインをはじめとする暗号資産と株式市場が急騰した。しかし、ホワイトハウスが即座にこれを否定したことで市場は急反転し、暗号資産は数%の下落に転じた。
この誤報は、フォックス・ニュースでの経済顧問ケビン・ハセット氏の発言を巡る誤解に端を発し、ロイターやゼロヘッジといった影響力のある媒体やX(旧Twitter)上の著名アカウントが拡散。わずか数時間のうちに2兆ドル規模の市場価値が揺れ動いた。
アルゴリズム取引や投機的ポジションの影響も指摘されており、確認されていない情報が瞬時に市場を動かすデジタル時代のリスクが改めて浮き彫りとなった。
SNSとメディアの連鎖が招いた誤情報の拡散経路

今回の市場混乱は、フォックス・ニュースでの経済顧問ケビン・ハセット氏のインタビュー内容が誤って伝えられたことに端を発した。ロイターがこの発言を「関税90日停止をトランプ氏が検討」と報じたことで、報道の正確性が確認されないまま影響力のあるSNSアカウントに拡散された。ウォルター・ブルームバーグ氏やゼロヘッジといったアカウントが投稿した情報は瞬く間に広がり、X(旧Twitter)上で急速に市場参加者の心理を刺激する結果となった。
この情報に反応し、暗号資産市場と株式市場はいずれも短時間で急騰。ビットコインは約35分間で76,000ドル未満から80,818ドルへと急伸し、イーサリアムも1,486ドルから1,608ドル、XRPは1.76ドルから1.97ドルに上昇するなど、価格は劇的に変動した。しかし、ホワイトハウスがこの報道を「フェイクニュース」と明確に否定すると、価格は反転。ビットコインは78,565ドルまで下落し、イーサリアムやXRPも同様に値を戻した。
報道が公式な根拠を欠いたまま拡散され、それが即座に市場に影響を及ぼす構造は、情報伝達のスピードが意思決定の質を凌駕する現代の構造的リスクを露呈させている。市場関係者が速報性を過剰に重視する一方、裏付けの取れていない情報が巨大な資産の流れを動かしてしまう現状が改めて浮き彫りとなった。
誤情報が生む資産変動の波紋とアルゴリズム取引の関与
今回の急激な値動きの背景には、アルゴリズム取引の存在が無視できない。自動化された取引システムは、見出しの文言や特定のキーワードに即時反応し、買い注文や売り注文を一斉に執行する。このため、未確認の情報が報道ベースで流れた段階で一気に資金が流れ込み、その後の訂正によって一転して売りが集中するという構図が形成された。
S&P500、ダウ、ナスダックといった主要株価指数も、当初の反応でプラス圏に転じたものの、ホワイトハウスの否定後には修正を余儀なくされ、SPDR S&P 500 ETFトラストは急落。約2兆ドルもの時価総額が一時的に失われたと報じられている。仮想通貨と伝統的金融市場の双方がこのような報道に対して同時多発的に反応した事実は、情報が市場全体に与える広範な影響力を物語っている。
特に仮想通貨市場はボラティリティの高さが特徴であり、こうした情報に対する過敏な反応がリスク資産としての性質を強調している。単なる噂が数千億円規模の資産変動を引き起こす構造において、投資判断の質を支える情報の信頼性は、今後さらに重要性を増すことが避けられない。今回の混乱は、デジタル時代における「情報の即応性」と「精度」の乖離がもたらす市場の脆弱性を象徴する事例である。
Source:CoinMarketCap