トランプ前大統領による関税強化の発表を契機に、10年物米国債の利回りが急上昇し、株式市場は大きく値を崩した。暗号通貨市場も一時下落を見せたが、ビットコインの反応は比較的穏やかであり、従来のマクロ経済要因への感応度に変化が見られると専門家は指摘する。
ブラックロックのCEOは最大20%の市場下落を予測しつつも、これを「買い場」と捉える経営者も少なくないと語った。一方、米国債の海外需要減退とインフレ期待の高まりは、今後さらなる市場変動の引き金になり得る。
「マグニフィセント・セブン」銘柄が大きく下落するなか、ビットコインは相対的な強さを見せており、株式市場との“デカップリング”が現実味を帯びてきた可能性も浮上している。
債券利回りの急騰が示す市場構造の変調

米国債の10年物利回りが月曜日に急上昇し、株式市場が下落するなかで、通常の「リスクオフ」局面とは異なる異変が見られた。RIAアドバイザーズのマイケル・レボウィッツ氏によれば、株式売却に連動して債券も放出された可能性が高く、市場全体が資産圧縮モードに入っているとの見方がある。債券価格が下がることで利回りが上昇し、その背景にはインフレ懸念や米国の財政に対する不信感も根を張っている。
専門家の間では、今回の利回り上昇が単なる景気回復や金利政策の織り込みを超え、貿易摩擦とインフレ期待が複雑に絡む構造的変化の兆しとみなされている。トランプ前大統領が4月5日に表明した10%関税の方針が市場に衝撃を与え、これが米国債の海外需要を冷やす要因ともなった。Amberdataのグレッグ・マガディーニ氏は、米国債の買い手離れが進むことで、将来的に利回りが高止まりするリスクを警告している。これは金利政策の自由度を削ぎ、市場の不安定性を一段と高める要因になり得る。
テック株との連動を弱めるビットコインの市場特性
ナスダック上場の主要テック企業群「マグニフィセント・セブン」が一斉に下落するなか、ビットコインは5か月ぶりの安値水準に迫りながらも、相対的に堅調な値動きを示した。特に「Roundhill Magnificent Seven ETF」との比較において、1BTCが約1,993株相当に達したという事実は、リスク資産間での資金の逃避先としてビットコインが再評価されつつある兆候といえる。これまでのように、株と仮想通貨が一体となって動く構造にひびが入り始めた可能性がある。
VanEckのマシュー・シーゲル氏は、10年債利回りの急上昇にもかかわらず、暗号通貨市場において強制的な清算やパニック売りが起きなかったことに注目している。2022年のような極端なボラティリティが見られなかった事実は、ビットコインがマクロ経済に対する反応性を一部失い、より独立した資産クラスとしての存在感を強めていることを示唆している。Crypto Twitter上では「デカップリング」の概念が再燃しており、金融政策と乖離するビットコインの動きが今後の市場構成を再定義する可能性も排除できない。
Source:Decrypt