Wedbush証券の著名アナリスト、Dan Ives氏がAppleの12か月後目標株価を従来の325ドルから250ドルへと大幅に引き下げた。背景には、トランプ前大統領による新関税政策と、中国市場でのiPhone需要減退がある。Apple株は過去5営業日で20%下落、最高値からは31%の下落に達した。

iPhoneの大半が中国で製造されていることから、地政学的リスクと製造コストの上昇が複合的に同社の業績に影を落としている。2025年度第1四半期決算ではサービス部門の成長が光ったものの、グレーターチャイナ地域の売上は11%減少した。市場では慎重な見方が強まりつつある一方、依然としてAppleのブランド力や収益基盤への信頼も根強い。

アナリストの目標株価引き下げと市場の反応

Appleに対する株価目標を、Dan Ives氏が325ドルから250ドルへと23%引き下げたことは、長年同社を強く支持してきた人物の姿勢変化として市場に衝撃を与えた。この変更は、関税政策によるコスト上昇リスクと、中国でのiPhone需要の減退という2点を主な根拠としている。

Ives氏のレポート直後、Apple株はわずか5営業日で20%下落し、史上最高値からの下落幅は31%に達した。この急落は一時的な投機的反応に留まらず、構造的な懸念を反映していると見る向きもある。

中国はAppleにとって最大の海外市場であり、かつ製造の要でもある。トランプ前政権による関税強化の再浮上は、部品調達から製品輸送までの全体コストを押し上げる可能性がある。さらに、ローカルブランドとの競争激化と政治的緊張の中で、消費者の購買心理が明確に冷え込んでいる。Ives氏の判断は、この複合的リスクに対する冷静な評価として理解でき、今後の投資判断においても指標となる動きといえる。

好決算と構造的リスクのねじれ

Appleは2025年度第1四半期において、売上高1243億ドル、純利益363億ドル、EPS2.40ドルと市場予想を上回る好業績を示した。サービス収益は13.9%増の263億ドル、粗利益も大幅に拡大しており、収益構造の強さが改めて証明された。ただし、iPhoneの売上は前年同期比で微減、さらにグレーターチャイナ地域の売上は11%減少しており、主力市場での成長鈍化が鮮明となっている。

ハードウェア依存からサービス重視への戦略転換は奏功しているが、中国市場の動向は依然としてAppleの業績に強く影響する。地域別に見ると、アメリカやヨーロッパの売上は拡大傾向にあるものの、それだけでグレーターチャイナの落ち込みを補完するのは難しい。為替変動や規制環境の変化といった不確実要因を前にして、成長の持続性には陰りも見える。好業績であっても、評価の維持には地政学的安定と販売地域の多角化が不可欠となる。

割高なバリュエーションと投資判断の分岐点

Appleの予想PERは25.94倍、PSRは7.24倍と、同業他社に比べてプレミアムが付されている。これまで同社の高い利益率とブランド競争力がこの評価を正当化してきたが、成長の減速とコスト上昇を背景に、その前提が揺らいでいる。現状の株価水準が維持されるには、持続的なキャッシュフロー創出とサービス分野の安定成長が必須であるが、主力商品の伸び悩みがこのバランスを脅かしている。

36人のアナリストの平均評価は「Moderate Buy(中程度の買い)」で、依然として強気な見解も多い。しかし、Dan Ives氏のように早期に目標株価を下方修正する動きが増えれば、全体の評価に変化が生じる可能性も否定できない。

特に、短期的な反発を狙うのか、長期的な成長余地に賭けるのかという視点で、投資家の判断は分岐点に差しかかっているといえる。市場は今、Appleを単なるテック企業ではなく、グローバルリスクの縮図として見つめ直している。

Source:Barchart