米国防総省(DoD)は、量子コンピュータの実用化を目指す新たな国家プロジェクト「量子ベンチマーキング・イニシアチブ(QBI)」に、Rigetti Computing(RGTI)を含む15社を選出した。年初来で45%以上下落していた同社株に対し、投資家心理の転換点となる可能性が指摘されている。
台湾大手Quantaとの3,500万ドルの資本提携や、中国による先端技術への巨額投資も後押し材料となり、量子分野での米中競争が加速する中、Rigettiの立ち位置は注目される。アナリストからはRGTI株に最大16ドルの目標株価が提示されており、現在の水準から約2倍の上昇余地が見込まれている。
市場平均を上回る25%の年成長率が予測される量子技術分野において、政府支援と民間投資の両輪を得たRigettiが市場の再評価を受ける展開も視野に入る。
米国防総省の量子計画に名を連ねたRigetti QBIがもたらす実務的な影響

Rigetti Computingが参加することとなった「量子ベンチマーキング・イニシアチブ(QBI)」は、単なる研究支援にとどまらず、量子コンピュータの実用化に向けた国家規模の選別プロセスである。QBIの主眼は、2033年までにコストを上回る実効的な計算性能を提供できる量子技術の確立にあり、選出された企業は技術的な指標と政府の期待値を同時に背負うこととなる。Rigettiにとってこの選出は、同社の量子技術が連邦政府の信頼に足る水準にあると評価されたことを意味し、官民の連携による開発資金やテスト環境の供与が現実的になる。
また、国防総省が主導するプロジェクトである以上、技術の民生応用のみならず、防衛・安全保障分野での活用可能性も視野に入る。軍需技術への量子応用は暗号解析やシミュレーション能力の飛躍的向上が期待されており、Rigettiが軍事技術分野のサプライチェーンに組み込まれる可能性も否定できない。これにより、同社は他の民間量子企業との差別化が図られる形となる。
一方で、政府主導のプロジェクトに関与することは、資金調達や評価基準が政策判断に左右されるリスクも伴う。量子分野における規制強化や技術選別の動きが加速する中で、Rigettiは技術優位性の維持とともに、政府方針との整合性を継続的に求められる立場となった。
巨大企業を凌ぐ可能性 投資家の目を引くQuantaとの提携と目標株価
2025年までにRigetti株の上昇余地を「16ドル」と予測したのは、Alliance Global Partnersのアナリスト、ブライアン・キンスリンガー氏である。彼は同社の現行技術と今後の成長ポテンシャルを評価し、MicrosoftやAmazonといった巨大企業と比較しても、Rigettiが量子コンピューティングにおいて戦略的優位を築いていると指摘する。この予測は、Quantaとの3,500万ドル規模の出資合意という具体的な資本提携を背景に持つ。Quantaは台湾第2位の電子製造請負企業であり、その支援はRigettiにとって製造能力やサプライチェーン強化の面で実質的な意味を持つ。
市場では依然としてRGTI株に対する評価が「強い買い(Strong Buy)」に集中しており、平均目標株価も15ドルと高水準に設定されている。これは、株価が年初来で大幅に下落している中でも、機関投資家が将来的な業績回復と技術的成長を織り込んでいることの表れである。量子技術市場が今後10年で年平均25%の成長を遂げるとの見通しの中、安値での投資機会と見る向きがあるのは自然な流れとも言える。
ただし、短期的には政府支援や資本注入が株価上昇の直接的材料となる可能性は限定的であり、投資判断には慎重さが求められる。高成長を前提とするセクターゆえに、過度な期待はバリュエーションの乖離を生むリスクもある。現段階では、長期的な視点から技術進展のトリガーを冷静に見極める必要がある。
Source:Barchart