ホワイトハウスの調査により、米国家安全保障担当補佐官マイケル・ウォルツが記者ジェフリー・ゴールドバーグを誤って機密チャットに追加した原因の一端が、iPhoneの連絡先提案機能にある可能性が浮上した。

ウォルツは昨年、取材依頼メールに含まれていたゴールドバーグの署名情報を第三者からのテキストで受け取り、iPhoneのアルゴリズムがそれを誤って別人の連絡先として提案。本人は確認せずに保存し、その後誤認に基づく操作が国家レベルの情報漏洩へと繋がった。

この一件は、スマートデバイスの利便性が重大なセキュリティリスクに転化し得ること、そして人間の確認作業の重要性を改めて浮き彫りにしている。

誤認の連鎖が生んだ情報漏洩の構図

2023年10月、米『The Atlantic』の編集長ジェフリー・ゴールドバーグがトランプ陣営への取材の一環で送信したメールには、氏の署名情報として電話番号が記載されていた。トランプ陣営のスポークスマンであるブライアン・ヒューズに転送されたこのメールは、国家安全保障担当補佐官マイケル・ウォルツのもとへとコピー&ペーストされた。

iPhoneはこのテキスト内の番号を認識し、既存の連絡先に紐づける提案を表示。ウォルツはこれを確認せず受け入れ、誤ってヒューズの名前でゴールドバーグの連絡先を保存する結果となった。その後2024年3月、ウォルツがSignal上のグループチャットにヒューズを追加しようとした際、この誤った連絡先が選択され、ゴールドバーグが極秘のイエメン爆撃計画に関する通信へアクセス可能な状態となった。

ホワイトハウスの内部調査により、この一連の流れが明らかとなり、AppleのiPhoneに搭載された連絡先提案機能の設計が不適切な結果を招いた可能性が指摘された。情報技術とユーザーの無意識的な選択が、国家機密の漏洩という重大な危機に発展する構図が露呈した事例である。

技術の利便性が引き起こす誤作動の本質

iPhoneに搭載された連絡先提案機能は、受信したメッセージ内の情報をもとにユーザーの連絡先データベースを自動的に補完するものである。今回のケースでは、この機能がテキストに含まれた電話番号を既存の人物と関連付けるよう促し、ウォルツがそのまま登録を承認したことで誤認が固定された。

Mashableの報道によれば、同様の動作を再現することは困難であり、Appleへの確認も未だ得られていないという。技術が判断した情報を人間が確認する責任を放棄したとき、利便性はリスクへと転じる。本件が象徴するのは、スマートデバイスが提供する「気づかい」のような補助機能が、想定以上の影響力を持ちうるという点にある。

情報の検証を怠れば、アルゴリズムが導いた誤情報が現実の意思決定を左右する事態にもなりかねない。今回の誤作動は、テクノロジーの進化に対する過度な信頼が招いた構造的問題の表れであり、判断の最終責任が常に人間にあることを改めて突きつけている。個人の情報管理においても、他人事では済まされない教訓である。

Source:Mashable