NvidiaがGPU市場における価格支配力を失いつつあるとの見解から、英金融大手HSBCが同社の株式評価を「ホールド」に引き下げ、目標株価を120ドルとした。アナリストのフランク・リーは、B200およびGB200シリーズにおける平均販売価格の伸び悩みを指摘し、価格戦略の限界を懸念材料とした。

加えて、ハイパースケーラーによる需要のピークアウトや、中国DeepSeekの台頭もリスク要因に挙げられる。一方、長期的にはAIロボティクスや自律システム分野での市場拡大余地はあるが、直近の成長への貢献は限定的とみられている。

こうした短期的課題を受け、株価は年初来で21.5%下落しており、時価総額2.38兆ドルを誇る同社に対する市場の期待と現実の乖離が浮き彫りとなっている。


HSBCによる目標株価の大幅引き下げとその根拠

HSBCのアナリスト、フランク・リーは、NvidiaのGPU価格支配力が鈍化している点を主要な懸念材料として挙げ、従来の「買い」評価を「ホールド」へと格下げした。目標株価は175ドルから120ドルへと約30%引き下げられた。B200およびB300チップ、さらにGB200からGB300への移行が進むNVL72ラック製品において、平均販売価格(ASP)の上昇が期待に届いていないという指摘が背景にある。

この販売価格の停滞は、需要のピークアウトや競合企業の台頭に起因する可能性がある。とりわけ、中国のDeepSeekの動向は、先進的なAIインフラ領域での価格競争を激化させる要因として注目されている。GPU市場での支配力を維持してきたNvidiaにとって、これらの構造的変化は利幅への直接的な圧力となる。

価格支配力が揺らぐという事実は、Nvidiaが単なる技術革新だけではなく、今後はより高度なサプライチェーン管理や顧客の囲い込み戦略に依存せざるを得ない段階に入っていることを示唆する。過去のように技術優位性のみで市場を掌握するモデルには、限界が見え始めている。

短期リスクに対する市場の受け止め方と株価の動揺

Nvidiaの株価は過去52週間で20%以上上昇したが、2025年初からは21.5%の下落を記録し、過去最高値からは30%以上の下落幅となっている。この変動は、業績の実態以上に市場がリスク要因に過敏に反応している証左といえる。とりわけ、ハイパースケーラーの需要ピークや競合の攻勢といった短期的課題が、長期の成長期待に影を落としている。

一方で、Nvidiaの財務基盤は極めて安定しており、利益率55.85%、自己資本利益率(ROE)112.33%、負債比率0.11倍という指標は、依然として業界内で突出している。今期の四半期決算ではEPSが市場予想を上回っており、これで4期連続の予想超過を記録している。このような実績に支えられ、アナリスト43人中37人が「強い買い」を維持している。

市場が短期的なリスクに過剰反応している現状は、成長企業に対する評価軸が短期収益偏重に傾いている兆候とも捉えられる。成長株であるNvidiaにとって、評価の揺れは織り込み済みであり、将来的にAIコンピューティングへの需要が構造的に拡大するならば、現在の株価調整局面は一時的なものである可能性も否定できない。

Source:Barchart