トランプ前大統領が中国製品に対し新たに50%の関税を課すと表明したことに対し、中国政府は「最後まで戦う」と反発し、報復措置の継続と拡大を示唆した。中国商務省はこの関税を「一方的ないじめ行為」と非難し、自国の主権と国益を守る姿勢を強調した。
一連の応酬により、アジアから欧米まで株式市場が動揺しており、専門家の間では世界的な貿易戦争の激化が現実味を帯びつつあるとの見方も広がっている。トランプ氏の発言が実行されれば、中国製品への関税は104%に達する可能性がある。
中国側には依然としてフェンタニル協力の停止や農産品輸入枠の変更など、多様な報復手段が残されているとされる。米中通商摩擦の行方は、国際市場と企業活動に深刻な影響を及ぼす懸念が強まっている。
米中双方が打ち出す報復関税の応酬構造とその影響範囲

トランプ前大統領は、2025年4月9日より中国製品に50%の追加関税を課すと明言し、これにより対中関税は合計104%に達する可能性が出ている。この措置はフェンタニル対策に関連する20%、直近の34%に上乗せされる形となる。中国はこれに即座に反発し、「最後まで戦う」と強調。商務省は米国の関税措置を「根拠なき脅迫」と非難し、追加の報復関税の可能性を明示した。
実際に、中国はすでに複数の対抗措置を講じており、農産品の輸入制限や米国企業への規制強化も選択肢として示唆されている。両国の応酬により、東京、ニューヨーク、香港の株式市場では投資家心理が悪化し、不安定な値動きが続いている。米中間の2024年のモノの貿易総額は5,820億ドルに上り、関税の拡大はサプライチェーン全体に波及しかねない。
今後、米国が対話を拒絶する姿勢を維持すれば、通商交渉の枠組みそのものが崩壊し、WTOなどの多国間貿易体制にも新たな緊張をもたらす恐れがある。特に欧州連合との貿易関係強化を中国が模索する動きは、グローバルな貿易秩序の再編を促す一因となり得る。
中国国内に広がる不安と現場の声に見る対外政策の真影
北京の街頭では、目まぐるしい通商報復の応酬に対する国民の反応が分かれている。建設業に従事する呉奇氏(37)は、「トランプ氏の発言は一貫性がなく、真の目的は米国の利益の確保だ」と語り、冷静に状況を見極めている姿勢を見せた。一方で、輸出業者や輸入事業者の間では、関税の影響が事業継続を脅かすとの危機感が広がっている。
ヨーロッパ市場向けにステンレス製アクセサリーを販売する王保羅氏(30)は、米国市場の不確実性が高まる中、EU圏への輸出強化に軸足を移す意向を示した。また、米国から化学品を輸入している黄潔思氏と楊愛佳氏は、コスト上昇と物流混乱により、従業員の解雇や事業の閉鎖を検討せざるを得ないと述べている。
こうした現場の声は、国の対外政策が日常生活に直結する現実を映し出している。国民の間には「困難を乗り越える力がある」との自信も見られる一方、政府の「強硬姿勢」が生活や雇用に深刻な影響を及ぼす可能性も否定できない。長期的には、企業の輸出先多様化や製造拠点の再配置が進み、通商環境そのものの変容が加速することも想定される。
Source:Barchart