Appleが、米国による中国製品への54%の追加関税を回避する手段として、インドからのiPhone輸入拡大を検討していると報じられた。背景には、トランプ政権が示した中国製品への高関税に対し、インドからの輸入には26%の関税案が提示されているという差がある。

550ドルで仕入れていたiPhone 16 Proが、関税の影響で最大300ドル上乗せされる可能性もあるなか、Appleは短期的にインド製iPhoneを活用しコスト圧力を緩和する構えだ。2025年にはインドで2,500万台を生産予定で、うち1,500万台が輸出に回される可能性も指摘されている。

生産の地域分散と価格維持の両立に向けた今回の動きは、グローバルな供給戦略の変化を象徴しており、他メーカーの動向にも波及する可能性がある。

iPhoneの製造地が価格を左右 関税差がもたらすコスト構造の変化

Appleが中国からの輸入iPhoneに対し課される54%の新関税を避けるため、インド製のiPhone輸入を本格検討している背景には、価格面での深刻な影響がある。現在550ドルで調達されているiPhone 16 Proは、この関税により最大300ドルの追加コストが発生する可能性があると報じられている。対照的に、インド製品に適用される関税は26%にとどまる見通しであり、その差が大きな転換点となり得る。

Wall Street Journalの情報によると、Appleは2025年にインドで2,500万台のiPhoneを生産する計画で、そのうち約1,000万台はインド国内で販売される。残りの1,500万台がアメリカ市場向けに輸出されれば、同市場の需要の約半分をカバーできる規模となる。これは単なる一時的対応ではなく、生産地の再編にもつながる可能性をはらんでいる。

このような動きは、価格の上昇を避けたいユーザーにとって歓迎される変化となるかもしれない。ただし、製造地の変化が製品の品質や供給安定性にどう影響するかについては、今後の動向を注視する必要があるだろう。

価格維持か品質重視か インド製iPhoneに向けられる期待と懸念

AppleがインドでのiPhone製造を拡大することで価格上昇を抑える姿勢を見せているが、インド製モデルに対する印象や品質面での懸念が完全に払拭されているとは言い難い。これまで高価格帯のiPhoneは主に中国の工場で精密に製造されてきた歴史があり、製品の完成度や安定供給には強い信頼が置かれてきた。一方、インド製iPhoneは過去に一部モデルにおいて組立精度や納期の面で課題が指摘されたこともある。

ただし、近年ではFoxconnやWistronといった大手サプライヤーがインド工場の設備と体制を急速に整えており、Appleがインドを主要な生産拠点と見なすことも十分に考えられる状況にある。すでに現地生産のiPhoneはインド市場でも展開されており、その品質も次第に安定してきたとの声もある。

関税回避によるコストメリットと、製品クオリティの両立が可能であれば、ユーザーにとっても恩恵は大きい。ただし、切り替えが急速に進んだ場合、一時的な供給のばらつきや品質ばらつきが生じるリスクは否定できない。信頼性の確保が引き続き焦点となる。

Source:TechCrunch