世界最大の資産運用会社ブラックロックは、米国株式に対する短期的な投資スタンスを「オーバーウェイト」から「ニュートラル」に引き下げた。背景には、政策の不確実性が経済成長と株式パフォーマンスに与える悪影響への警戒感がある。

4月4日の市場調整後もS&P500は2.5%上昇を見せたが、ブラックロック・インベストメント・インスティテュートのジャン・ボワヴァン氏は、3カ月の戦術的視点でのリスク資産への慎重な姿勢を強調。短期国債への資産シフトや中国株の縮小も戦略に含まれる。

一方で、同社はAIなどの構造的成長要因に支えられた米国市場の長期的回復には依然として期待を寄せる。CEOラリー・フィンク氏も20%の下落リスクに言及しつつ、それを買いの機会と見る考えを示している。

ブラックロックが米国株を中立評価に転換した背景

ブラックロックは、短期的な市場の不透明感を受けて、米国株に対する投資評価を「オーバーウェイト」から「ニュートラル」へと見直した。ジャン・ボワヴァン率いるインベストメント・インスティテュートは、政策の不確実性が経済活動に与える圧力を懸念材料として挙げており、この要素が株式市場の持続的回復を妨げる可能性を指摘している。特に、4月初旬の貿易関税を契機とした株式市場の調整は、短期的には回復傾向を見せているものの、本質的な懸念は依然として払拭されていない。

同社は、直近3カ月の市場環境に対して戦術的な慎重姿勢を明確に打ち出し、投資家のリスク許容度を見直す必要性を強調した。これに加え、ブラックロックは中国株のエクスポージャーを引き下げ、短期米国債を組み入れる戦略を採用している。これらの動きは、リスク資産から資本を一時的に退避させ、相対的に安全とされる資産への再配分を示すものである。

こうした判断の背景には、FRBの金融政策の行方や地政学的リスク、そして大統領選を控えた政策運営の不透明性といった要因が複雑に絡んでいる。ブラックロックは市場全体のボラティリティに備え、柔軟かつ短期的な対応を重視する局面に入っている。

AI成長期待と株価調整リスクの両面を捉える戦略的視座

ブラックロックは短期的な市場見通しに警戒を強めつつも、米国株に対して長期的な信頼を失ってはいない。AI(人工知能)を中心とする構造的な技術革新が経済全体をけん引する可能性に着目し、将来的には再び米国が世界市場をリードするとの見方を崩していない。ボワヴァン氏も短期的な慎重姿勢と長期的な成長期待を併存させたコメントを残していることが、この二面性を象徴している。

加えて、CEOラリー・フィンク氏が株式市場における20%下落のリスクを示唆したことは注目に値する。彼はこの下落を一時的な調整と捉え、長期投資家にとっては買いの好機と発言している。市場のセンチメントが揺れる中でも、同社は局面ごとの資産配分調整によってリターンを最大化することを狙っている。

このようなアプローチは、短期的なリスク管理と長期的なビジョンの両立を模索する投資哲学の表れといえる。市場のノイズに左右されず、基調となる成長ドライバーを見極める姿勢は、変動の激しい現代において有効性を持ち続けると考えられる。市場調整局面を単なる防御ではなく、将来への布石と位置付ける判断が際立っている。

Source:Finbold