半導体大手のAdvanced Micro Devices(NASDAQ: AMD)が、市場混乱の中で厳しい局面に立たされている。2025年4月8日時点で株価は年初来で30.63%下落し、S&P500全体の値動きが鈍るなか、個別銘柄としても勢いを欠いた。

こうした中、米証券会社KeyBancはAMDの格付けを「オーバーウェイト」から「セクターウェイト」へと引き下げた。中国におけるAI関連事業の持続可能性や、インテルとの価格競争への懸念が理由として挙げられている。

注目すべきは、かつて140ドルと強気だった目標株価が今回のレポートには記載されなかった点である。これは、将来的な回復見通しに対する確信が揺らいでいる可能性を示しており、同社株の行方に対する市場の不安が色濃く映し出されている。

KeyBancが格下げに踏み切った背景とその含意

2025年4月、KeyBancはAdvanced Micro Devices(AMD)の株式評価を「オーバーウェイト」から「セクターウェイト」へと引き下げた。この判断の背後には、AI関連事業における中国市場の不透明性と、インテルとの価格競争激化に対する懸念がある。特に中国市場については、米中関係の緊張や規制強化の影響が長期的にビジネスモデルを揺るがす可能性が意識されている。

また、火曜日の格下げ発表において、従来提示されていた140ドルという目標株価がレポートから削除されたことは、アナリストが今後の業績見通しに対する具体的な予測を回避したと読み取れる。これはAMD株に対する市場評価の不確実性が増していることを示しており、単なる中立評価というより、警戒的なスタンスへの転換と受け止められている。

短期的には、他の主要銘柄が上昇する中でAMD株が逆行安を記録した事実が、同社の競争力に対する投資家の不安を裏付ける形となった。年初来で30%以上の下落幅に達していることからも、価格調整局面が一時的な揺り戻しではなく、構造的な懸念に起因している可能性がある。

割安感と市場の疑念が交錯する投資判断の難しさ

AMD株は4月8日時点で1株83.79ドル、将来予想株価収益率(PER)はわずか16.26とされ、割安感を漂わせている。PER水準だけを見れば、同業他社と比較して投資妙味があるように映る。しかし、現状の市場は単純な数値評価では割り切れない複雑さを孕んでいる。AI分野の競争激化や地政学的リスクが収益性に影を落としており、表面的な割安さが市場参加者の慎重姿勢を和らげるには至っていない。

特に注目すべきは、KeyBancによる目標株価の撤回という事象である。従来の強気スタンスを維持していれば、反転のシグナルと捉える投資家もいただろう。しかし目標価格の提示そのものが見送られたことは、今後の株価水準を想定する材料が不足していることを意味しており、判断材料の曖昧さが投資判断を一層困難にしている。

したがって、AMD株に対する市場の視線は、単なる業績指標の先読みではなく、業界全体の構造変化やマクロ経済の影響を踏まえた中長期的な視点を求められている。短期的な価格反発が見られたとしても、根本的な回復には相応の時間と実績が必要であると考えられる。

Source:Finbold