ウォーレン・バフェットは、株価が常に正当な価値を反映しているとする効率的市場仮説(EMH)を「ひどく間違っている」と明言し、現実の市場にはしばしば非合理な価格が存在すると指摘してきた。自身の成功をその証拠とし、ベンジャミン・グレアムらバリュー投資家たちの実績も挙げる。

一方で、一般の投資家にはインデックスファンドへの投資を推奨しており、専門知識や時間、感情の制御といった要素が求められるバリュー投資が万人向けではないとの認識を示している。これは、理論と現実のギャップを見極めた上での、極めて実務的な視点に基づく助言である。

バフェットはかつて「効率的市場理論を信じる投資家たちのおかげで成功できた」とも語っており、理論への懐疑が彼の投資哲学を形成してきたことは明白である。

バフェットが指摘する市場の「非効率性」とバリュー投資家の成功事例

ウォーレン・バフェットは、株式市場が常に情報を反映し合理的に機能するという効率的市場仮説(EMH)に対して、一貫して疑義を呈してきた。その理由として、自身を含むバリュー投資家たちが長年にわたり市場平均を上回る成果を挙げてきたという実績を挙げている。バフェットは、株価が企業価値から乖離して極端に高く、あるいは低く評価される局面が現実には頻繁に存在すると主張している。

2022年の株主宛書簡では、「教科書の中にしか存在しない」と表現するほど、理論上の市場効率性と実際の市場の乖離を強調した。また、ベンジャミン・グレアムや他の著名なバリュー投資家たちが一貫して割安株を見出し利益を上げてきた事実を例示し、それがEMHの根本を揺るがす証左とした。特に、自身が率いるバークシャー・ハサウェイが長期にわたり市場平均を凌駕し続けている点も、理論の限界を突きつけるものである。

一方で、こうした成功例がすべての投資家に適用できるわけではない。市場に存在する非効率性を活かすには、綿密な企業分析、明確な判断基準、そして市場のノイズに惑わされない強靭な精神力が必要とされる。これらは理論では説明できないが、実務の世界では決定的な差となる。バフェットの経験が示すのは、理論では計れない「人の判断力」が投資成績に直結するという現実である。

一般投資家にインデックスファンドを推奨する理由と戦略の選別

バフェットが効率的市場仮説を明確に否定しているにもかかわらず、多くの一般投資家にはS&P500などの低コストインデックスファンドを推奨している事実は、彼の投資観に一見すると矛盾を感じさせる。だが、この推奨の背景には、アクティブな投資戦略が要求する高度な分析力、経験、そして冷静な意思決定が万人に可能ではないという現実的な判断がある。

バフェットは、2013年の株主宛書簡において「勝ち馬を選ぶのではなく、全体としてうまくいくビジネス群の一部を所有すべきだ」と述べている。つまり、感情に流されず、着実に市場全体の成長に乗る手段としてインデックス投資を選ぶことが、長期的に見て合理的であると認識している。特に、ドルコスト平均法による定期的な投資が、価格変動のリスクを分散し、安定した成果につながることも助言の根拠となっている。

この方針は、投資の「手段」と「担い手」の適合性を重視する姿勢を物語る。どれほど有効な戦略でも、それを使いこなせる能力がなければ意味を持たない。バフェットの推奨は、知識や経験に乏しい個人が過度な自信から市場を読み誤ることを避けるための「守りの戦略」ともいえる。効率性という理論にではなく、人間の行動心理に根ざした慎重な助言であり、現実を踏まえた極めて実用的な投資哲学である。

Source:Investopedia