マイクロソフトは、Windows Server Update Services(WSUS)経由でのドライバー同期サポート終了を再び延期した。WSUSを利用した更新方法からの移行が進まない現状と、「オフラインデバイス環境」への対応継続が理由とされる。

同社は当初、2024年中に同機能を非推奨とし、今月にも提供を打ち切る予定だったが、ユーザーからのフィードバックを受けて方針を修正。対象ユーザーは全体の34%に過ぎないが、大規模組織を含む「少数の顧客」によって数百万台規模の影響が想定されている。

代替手段としてはMicrosoft IntuneやWindows Autopatchが推奨されており、クラウドベースの管理体制への移行が急がれる一方で、マイクロソフトは依然としてレガシーシステムへの配慮を迫られている。

WSUSドライバー同期機能の非推奨化、再延期の背景とマイクロソフトの判断軸

マイクロソフトは、Windows Server Update Services(WSUS)によるドライバー同期の非推奨化を再度延期する決定を下した。

本来、2024年4月中にもサポート終了が予定されていたが、多くの利用者が代替手段への移行を完了できていないことが判明し、提供継続の判断に至った。マイクロソフトは、ユーザーから寄せられた「貴重なフィードバック」を理由として挙げ、実装済みの廃止計画に一時的な修正を加えたと説明している。

WSUSを通じたドライバー配信の利用率は全体の34%にとどまるものの、「オフラインデバイス環境」での依存度が高いとされており、とくに隔離ネットワーク内のPCや一部の大企業環境では代替手段が機能しづらいケースも存在する。

さらに、フィードバック上では8%のユーザーしか懸念を表明していないが、その背後にある導入規模は決して無視できるものではない。こうした判断の柔軟性こそが、エンタープライズ顧客を多数抱える同社の戦略的バランスである。

延期という決定は単なる後退ではなく、業界全体の運用実態に即した再調整と捉えるべきだろう。クラウドへの移行が叫ばれる一方で、すべての現場が一様に最新インフラに適応できるわけではない。技術的要請と現実運用との乖離に直面した今回の対応は、インフラ更新の過渡期における教訓の一つとなり得る。

Microsoft IntuneやAutopatchへの移行促進とWSUSの位置づけ再考

マイクロソフトは、クラウドベースの新しい管理ソリューションへの移行を強く促している。Microsoft IntuneやWindows Autopatchは、Windows 11以降の端末に最適化されており、より柔軟で一貫性のあるアップデート管理を可能にするとされる。特に、リアルタイムなパッチ配信やモバイルデバイスの管理統合において、従来型のWSUSよりも高い即応性と利便性を備えている点が評価されている。

一方で、WSUSは依然として「オフラインデバイス環境」において重要な役割を果たしており、企業の制限ネットワークや業務用特化システムでは現実的な選択肢であり続けている。

そうした中、今回の延期判断はクラウド移行戦略に逆行するものではなく、あくまで移行過程における緩衝措置と見るべきだ。今後も段階的廃止方針は維持される可能性が高く、移行未完了の組織にとっては猶予期間が設けられたに過ぎない。

マイクロソフトは、レガシー環境を完全に切り捨てることなく、同時に近代的なアップデートインフラへの転換も視野に入れた二層戦略を進めている。この方針は、単なる移行の強制ではなく、顧客の成熟度とIT構造に応じた柔軟な移行を促す構えの表れである。整備されたクラウド基盤が標準となる未来に向けて、現行インフラの最適化と段階的な統廃合が求められる局面に差し掛かっている。

Source:TechSpot