マイクロソフトは2025年4月の「パッチチューズデー」に合わせ、Windows 11の最新累積更新KB5055523およびKB5055528をリリースした。対象はバージョン24H2および23H2で、それぞれビルド26100.3775と226×1.5191へと更新される。
今回の更新にはAI検索の強化、44言語から英語へのライブキャプション機能の拡張、自然言語による音声操作やウィジェットの柔軟なカスタマイズ機能など、実用性を意識した多数の新機能が盛り込まれている。
また、日本語表示の氏名順修正やカラープロファイル不具合の解消、セキュリティ面ではKerberosやFIDO関連の認証トラブル修正も含まれ、信頼性と操作性の両面に配慮した内容となっている。
Copilot+ PCが示す検索体験の再構築

今回のWindows 11累積更新KB5055523およびKB5055528により、Copilot+ PC向けにAI検索機能が強化された。文書や写真、各種設定に対して、ユーザーが「テーマを変更したい」といった自然な言語で指示を出すと、関連項目を的確に検索できる設計となっている。これは従来のキーワード依存型検索とは異なり、質問意図の理解と文脈処理を統合したインテリジェントな仕組みである。
この機能はまずSnapdragon搭載PCに展開され、今後はAMDやIntel搭載のCopilot+ PCにも展開予定とされる。さらにOneDriveと連携することで、クラウド上の写真も「夏のピクニック」など曖昧な表現を用いた検索が可能になる。クラウドの膨大なデータをAIが即座に横断する構造は、業務におけるファイル検索効率を大幅に引き上げる基盤となる。
膨張するローカルとクラウドの情報を一元的に扱うには、自然言語処理とAIが不可欠となっている。音声・テキスト入力の双方に対応するインターフェースが整備されつつある現在、OSレベルでのAI統合は検索行動そのものの定義を揺るがす可能性をはらむ。
多言語処理と音声操作が描くポストキーボード時代
本更新では、AMDおよびIntel搭載PCでも44以上の言語から英語へのライブキャプション翻訳が可能になった。またSnapdragon端末では中国語(簡体字)へのリアルタイム翻訳にも対応し、音声アクセスでは中国語(繁体字・簡体字)による操作も可能となっている。多言語対応は字幕生成や音声認識の質的向上を背景に、非英語話者のアクセシビリティを根本から刷新する要因となる。
これらの機能は単なる利便性向上にとどまらない。音声入力の自然化と多言語認識の普及は、従来のキーボード・マウス依存の操作体系に対し新たな選択肢を提供するものである。特に中国語圏向けに重点が置かれている点は、市場規模とAI音声処理分野における優先順位の変化を示唆する。
現段階では音声操作とライブ翻訳の活用は限定的な環境に留まるものの、今後のハードウェア性能の底上げに伴い、より多くのアプリケーションでの標準装備化が視野に入る。これはモビリティとUI/UX設計の両面で、人とデバイスの関係性を大きく書き換える一歩となるだろう。
Source:BleepingComputer