Microsoftは2025年4月の「パッチチューズデー」にあわせ、Windows 11 Version 24H2向けの累積更新KB5055523(Build 26100.3775)を公開した。本更新はセキュリティ修正に加え、Copilot+ PC向けにAI検索やリアルタイム翻訳対応のライブキャプションなど、大規模な機能追加を含む「機能ドロップ」として位置づけられている。

更新後は、Windows検索がセマンティックインデックスを用いた自然言語処理に対応し、ファイル名ではなく内容ベースでの検索が可能となる。また、AIモデルの組み込みにより更新サイズは最大3GB規模に達し、従来の最適化方針からの転換も示唆されている。

加えて、ゲームパッド入力の拡張、タスクバーへの絵文字ボタン追加、EU向けのウィジェット機能、カード形式のシステム情報表示など、多方面にわたる改良が施された。

Copilot+ PC限定のAI検索機能がもたらす操作性の革新

KB5055523の中核をなすのが、Copilot+ PC専用に設計されたAI検索機能の導入である。従来のWindows検索は語句に依存するインデックス方式に限られていたが、今回のアップデートではセマンティックインデックスを併用し、自然言語での問い合わせに対応する。例えば「昨年の営業報告書」と入力すれば、ファイル名を正確に指定せずとも該当するExcelファイルにたどり着ける。

この機能は設定アプリやファイルエクスプローラーにまで統合されており、日常の操作性を大幅に向上させる。従来の曖昧検索の精度に不満を抱えていた利用者にとっては、業務効率を根底から変える可能性がある。加えて、ライブキャプション機能も強化され、44言語へのリアルタイム翻訳に対応する点は、国際的な会議や資料閲覧時の壁を取り払う試みと見られる。

ただし、これらの高度なAI機能はSnapdragon搭載のCopilot+ PCに限定されており、一般的なIntelやAMDベースのデバイスでは利用できない。MicrosoftはAI導入のハードルをあえて設定することで、Copilot+の市場浸透を促進する狙いを持っていると考えられる。今後、対象機種の拡大がなければ、利便性の格差が利用環境に起因する可能性も否定できない。

更新サイズの増加が示すWindowsの転換点

KB5055523のファイルサイズは、ARMアーキテクチャを採用したCopilot+ PCで2,960.6MB、IntelやAMDを搭載するPCで1.3GBに達する。特に前者は3GBに迫る規模であり、従来の「軽量化を重視した更新方針」からの明確な転換が見て取れる。Microsoftはこれまで、機能更新とファイル容量のバランスを取ることを重要視していたが、AIモデルの本格導入によりその前提が変化している。

注目すべきは、AI非対応機種にもAIモデルを含む.msuパッケージが配布されている点である。これは、AIモデルの選別配布が行われていないことを意味し、今後の拡張可能性を残した対応とも取れる。一方で、非対応機種に不必要な容量負担が発生している現状は、ユーザー体験の合理性という観点から再考の余地がある。

Microsoftは将来的に、IntelやAMDベースのデバイス向けにもAI機能を拡張する可能性があると見られるが、それに先んじて全機種にAIリソースを内包させる現在の設計は、開発側の効率を優先した措置といえる。容量の増加が一時的措置にとどまらなければ、更新戦略自体の見直しを迫られる局面も想定される。

Source:Windows Latest