Microsoftは、Windows 11ベータ版においてスタートメニューの再設計を進めており、3年ぶりの大規模なUI変更として注目を集めている。最大2行×8個のアプリを表示可能な新デザインでは、初期表示を拡張し、すべてのアプリに即座にアクセスできる仕様が特徴である。

従来「すべて」ボタンの背後に隠れていたアプリ一覧は、縦スクロール、横グリッド、カテゴリ別と複数形式で整理可能となり、表示効率が格段に向上する。また、「おすすめ」セクションを完全に無効化できるオプションが確認されており、Microsoft Storeの広告表示に不満を抱く利用者層にとって改善の兆しとなる可能性がある。

OSの根幹に関わるUI設計を見直す動きは、生成AIへの注力と並行して、ユーザー体験の質的転換を目指すMicrosoftの姿勢を象徴している。

スタートメニュー再設計の中核は可視性と操作性の徹底的な見直し

Windows 11ベータ版に導入されたスタートメニューの再設計は、視認性とアクセス性の向上を主眼とした構造的な刷新である。従来の「すべて」ボタンの奥に隠れていたアプリ一覧は、スクロール可能な縦型リスト、横方向のグリッド表示、そしてカテゴリ別ソートという3種のモードで表示されるようになった。なかでもカテゴリ表示は情報の整理に優れ、限られた画面空間を効率的に活用できる設計とされる。

新スタートメニューでは、初期状態で最大2行×8個のピン留めアプリを展開可能とし、必要に応じてこの領域を拡張できるよう配慮されている。この仕様は、頻繁に使用するアプリケーションへの迅速なアクセスを求めるユーザーにとって合理的な選択肢となりうる。また、スクロール領域の下部に常時アプリ一覧が表示される設計は、目的のアプリを探す操作フローを大幅に簡素化する。

こうしたレイアウトの変化は、単なる見た目の刷新ではなく、Windowsが抱える根本的なナビゲーション設計の課題に対する試みと位置づけられる。特に業務環境などで多くのアプリケーションを扱う場面において、情報密度と操作の直感性は作業効率を左右する重要な要素となる。

広告排除機能に見るユーザー意識の変化とMicrosoftの対応

新しいスタートメニューにおいて特に注目されるのが、「おすすめ」セクションの完全無効化が可能である点だ。従来のWindows 11では、この領域に最近開いたファイルやアプリが表示される仕様だったが、2025年現在のビルドではMicrosoft Storeの広告が表示されるケースも増えていた。この機能に不満を示すユーザーの声が強まりつつあった背景がある。

今回、明確に広告表示をオフにできる設計がテスト段階とはいえ盛り込まれたことは、利用者の操作環境に対する自己決定権を重視する流れと呼応している。広告は利便性を損なうとの見解が一定数存在しており、とりわけ業務用途での使用を前提としたユーザーにとっては、情報の純度が求められる場面が多い。これに応じた今回の設計変更は、Microsoftにとっても利用者層との関係性を再構築する試金石となる。

このような自由度の拡張は、クラウド連携やAI統合を進める一方で、ユーザーインターフェースの基本構造に対するフィードバックを重視する姿勢を示すものといえる。デジタル環境の変化に対応するには、新機能の投入と同時に、既存の仕組みを見直す柔軟性が不可欠である。今回のスタートメニュー再設計は、こうした相反する要請を統合しようとする動きの一端である。

Source:Ars Technica