バークシャー・ハサウェイ会長のウォーレン・バフェット氏は、トランプ前大統領の関税政策を支持したとするSNS上の報道を否定した。バークシャー側は公式声明で「すべて虚偽の情報」と明言し、動画内の発言引用も事実無根であると強調。

実際には、バフェット氏は関税を「物価を押し上げる税」と位置づけ、貿易戦争の引き金となるリスクに警鐘を鳴らしてきた。特に2019年には「自由貿易に近い形が世界を豊かにする」と述べている。一方で、市場の急落局面においては株式購入を推奨し、「悪いニュースこそ投資家の友」と語るスタンスを一貫して示している。

バフェット氏が一貫して警鐘を鳴らす「関税=経済的な負担」の構図

ウォーレン・バフェット氏は、関税の経済的影響について長年にわたり懸念を表明してきた。2025年3月のCBSニュースでのインタビューでは、「関税は結局、消費者が負担する税金である」と語り、幻想的な利益を否定した発言が注目を集めた。また2018年には、トランプ政権下で課された鉄鋼やアルミニウムに対する関税が、自社の関連企業の原材料コストを押し上げたと明かしている。

バフェット氏はこのような政策がインフレを加速させ、消費者の購買力を低下させると分析してきた。さらに2019年には、関税の応酬が招く貿易戦争について「世界全体にとって悪影響が及ぶ」と警告し、自由貿易がもたらす利益の広がりに言及している。彼の考えの根底には、経済活動の自由と連動性を尊重する哲学が一貫して存在している。

一連の発言から見えてくるのは、保護主義政策の短期的な政治的メリットに対し、長期的な経済的リスクが上回るという見通しである。関税は国家間の信頼を損ねるだけでなく、世界経済のダイナミズムを抑制する要因ともなり得る。政策判断には目先の支持率だけでなく、将来的な波及効果への冷静な視座が求められる。

株価下落局面における冷静な行動こそ投資家の資質と語るバフェット氏

2025年に入り、S&P500が下落基調を示す中、ウォーレン・バフェット氏の過去の言葉が再び注目されている。2008年の金融危機の最中、彼はニューヨーク・タイムズ紙に寄稿し、「恐怖が市場を支配する今こそ、株式を買うべき時である」と述べた。経済の混乱を前にしても、堅実な企業が長期的には利益を回復するとする確信が、彼の投資哲学の根幹にある。

バフェット氏は市場の20%下落、すなわちベアマーケットを「投資家の友」と称し、株式が割安となることで将来的なリターンが大きくなる点に着目してきた。目先の変動に動揺せず、優良企業の未来を信じて持ち続ける姿勢こそが、長期的な資産形成に寄与するという立場である。実際、2008年以降の米国市場は緩やかながらも着実な成長を見せており、この見解を裏付けている。

一方、現在のように政策リスクが市場心理に影を落とす局面では、無用な恐怖や誤情報による過剰反応が投資判断を狂わせる可能性がある。こうした中で、バフェット氏がSNS上の虚偽情報に即座に反論したのは、投資家心理を守る一手でもあろう。情報の正確性が問われる今、長期視点をもつ思考こそが、市場の波に飲まれないための鍵となる。

Source:CNBC