米国ホワイトハウスは8日、トランプ大統領が全中国製品に対して最大104%の関税を9日から実施すると発表した。これにより、平均関税率は約125%に達する見通しである。背景には中国による34%の報復関税があり、米側はさらに50%を上乗せ。

中国政府はこれを「誤上加誤」と非難し、農産品の輸入制限や知的財産調査など対抗措置の検討に入った。アジア株も急落し、日経平均や香港ハンセンは3%超の下落を記録。ニューヨーク市場も続落し、ナスダックは2.15%の下落となった。

低価格通販大手SheinやTemuを利用する米国消費者にも影響が及ぶ。800ドル以下の商品にも例外なく90%の関税が課される見通しであり、生活必需品を含む輸入品の価格上昇が避けられない状況だ。

800ドル未満の輸入品に90%課税へ EC依存消費者に打撃

トランプ大統領は4月9日以降、800ドル未満の中国製商品にも最大90%の関税を課す大統領令に署名した。これにより、従来関税の対象外とされてきた「デミニマス」制度が大幅に見直され、Shein、Temu、AliExpressといった低価格ECプラットフォームを経由した消費行動に深刻な影響が及ぶ。対象は衣類やアクセサリー、スマートガジェット、生活雑貨など幅広く、物価上昇の波が一般家庭に直接波及する構図となっている。

この措置は、中国が報復関税を撤回しなかったことに対する追加制裁であるとされるが、実質的には米国内の小売市場構造に変化をもたらす可能性を含んでいる。近年、若年層や低所得層を中心に、ECによる安価な輸入品に依存する傾向が強まっていた。90%という極端な関税率は、商品の最終価格を2倍近くに押し上げる計算となり、これまで価格競争力で優位にあった中国系プラットフォームは著しい競争力の低下を強いられる。

この動きにより、米国企業の製造拠点回帰が一部加速する見方もあるが、短期的には代替供給源の確保が難しく、価格転嫁を通じて消費者の購買意欲を鈍化させる公算が大きい。結果としてインフレ圧力が強まり、連邦準備制度理事会(FRB)の金融政策にも複雑な影響を及ぼす可能性がある。今回の措置は単なる通商政策にとどまらず、米国経済全体の消費構造を見直す契機ともなり得る局面である。

中国が報復措置を示唆 農産品と知財を巡る攻防が激化へ

中国商務省は4月8日、トランプ政権による追加関税を「誤上加誤」と強く非難し、報復措置を講じる用意があることを表明した。国営新華社の上級編集者・劉鴻はSNS上で、米国産の大豆やソルガムといった農産品への追加関税、米国製映画やコンサルティングサービスの輸入制限、さらには知的財産に関する収益調査を含む具体的な対抗策を示した。これらは政府公式見解ではないものの、共産党と近い人物からの発信として注視すべき動きである。

米中貿易における最大の構造的対立の一つが、知財権と技術移転を巡る摩擦である。米国企業が中国市場にアクセスする際に課される技術提供や現地合弁の義務は、長年にわたり不公平な取引慣行として批判されてきた。仮に中国側が米企業の知的財産収益の実態調査を本格化させた場合、米国のハイテク産業やコンテンツ産業に対する規制強化が現実のものとなる可能性もある。

農産品に対する関税強化も、選挙年におけるトランプ政権への政治的揺さぶりとして一定の効果を持ち得る。大豆などの輸出先として中国市場に依存する米国中西部の農業州では、2018年以降の貿易戦争で大きな打撃を受けた過去がある。現在の報復措置が再び導入されれば、農業関連企業の収益低下や雇用不安が連鎖的に広がる懸念がある。経済と政治が密接に交差するなか、双方の対立は単なる関税応酬を超えた地政学的駆け引きへと発展しつつある。

Source:CNN