ドナルド・トランプ前大統領は4月8日、共和党下院議員向けの資金集会で、中国に対する追加関税を含む通商政策が2026年の中間選挙において共和党の勝利を後押しすると強調した。トランプ氏は、既存の54%の対中関税にさらに50%を上乗せし、合計104%とする方針を発表。発効は9日午前0時1分とされている。

一方、超党派の議員らは、関税の発効後40日以内に議会承認がなければ自動的に失効させる法案を推進中で、党内にも反発の動きが見られる。トランプ氏はこれに反発し、「交渉のやり方が違う」と挑発的な発言も展開。

民主党は「無計画な関税は家計に打撃を与える」と批判し、生活費上昇と経済混乱を争点化する構えを見せており、選挙戦の火種となる可能性がある。

対中関税率は過去最大の104%へ 共和党主導の強硬姿勢が鮮明に

トランプ前大統領は8日、対中関税の引き上げを表明し、従来の54%に加えさらに50%を上乗せすることで、合計104%という異例の高率に到達する。この措置は9日未明から発効予定であり、米中間の通商摩擦が一段と深刻化することが避けられない情勢となった。背景には2026年中間選挙に向けた政治的戦略が色濃く、トランプ氏はこの強硬策を「共和党の追い風」と位置付ける姿勢を崩していない。

しかし、市場はこの動きを好感していない。発表直後には株式市場の上昇幅が消失し、先行きへの警戒感が強まった。トランプ氏は演説の中で「これは良い状況だ」と強調したが、関税の実質的な負担は企業と消費者に転嫁される構図が明白である。共和党内にはドン・ベーコン下院議員やチャック・グラスリー上院議員らを中心に、関税措置に議会承認を義務付ける法案が進められており、権限の集中を警戒する声もある。

一連の動きは、政権の対中強硬姿勢が党内結束を図る一方で、経済的副作用や国際関係への波及を伴うリスクを孕んでいる。短期的な政治的得点狙いにとどまるか、それとも長期的な通商戦略の一環となるかは、今後の展開に委ねられる。

議会と大統領の権限対立が浮き彫りに 共和党内分裂の兆しも

トランプ氏の一連の関税措置を受け、議会では大統領権限の制限に向けた動きが顕在化している。ネブラスカ州選出の共和党下院議員ドン・ベーコンと、アイオワ州選出のチャック・グラスリー上院議員は、超党派による法案を主導しており、大統領が発動した関税は40日以内に議会の承認がなければ自動失効する仕組みを構想している。これにより、通商政策の透明性と説明責任の確保を狙う。

トランプ氏はこれに対し、演説で「交渉の仕方が違う」と述べ、党内からの批判を「目立ちたがり屋の反逆者」と一蹴した。こうした強硬な態度は、一部の保守層からの支持を維持する狙いがあると見られるが、共和党内では意見の不一致が徐々に表面化している。特に、中道派や市場重視の議員にとって、貿易障壁の強化は選挙区経済への悪影響を招きかねない。

党の結束を訴えるトランプ氏の姿勢と、政策の実務面を重視する議会側の現実的懸念。その間に広がる溝は、2026年の選挙戦に向けて同党の戦略的弱点となり得る。党内で権限のバランスを巡る議論が加速すれば、トランプ氏の影響力にも一定の制約が生じる可能性がある。

Source:thehill