ビットコインは過去最高値から30%以上下落し、8万ドルの大台を目前に攻防が続く中で、市場全体はリスクオフの姿勢を強めている。米中間の貿易摩擦や地政学的リスクが不透明感を増幅し、アルトコインはさらに大きな打撃を受けた。

しかし、CryptoQuantのオンチェーン分析によれば、デイリー実現損益比率にパニック売りの兆候は見られず、HODLerと呼ばれる長期保有者はポジションを維持している。市場の混乱にもかかわらず、投げ売りの気配は乏しく、基礎的な信頼が依然として根強い。

強気派が速やかに主導権を握れば反発の可能性もあるが、現在は下落トレンドの中であり、今後数日が8万ドルを死守できるか否かの分水嶺となる。

パニック売りを示す兆候は見られず 長期保有者の安定行動が浮き彫りに

ビットコインは8万ドルの回復を目前に足踏みを続けているが、CryptoQuantのオンチェーンデータによれば、典型的な capitulation を示す「デイリー実現損益比率」に異常は見られていない。これは、市場が急落した際に現れる「オレンジのバー」が可視化されていないことを意味し、長期保有者、いわゆるHODLerが投げ売りを行っていない証左とされている。週末の下落局面においても、この動きは変わらず、経験豊富な投資家層が市場のボラティリティを冷静に受け止めている様子がうかがえる。

BTCは3月以降、15%以上下落しており、75,000ドルを一時割り込む場面もあったが、短期筋の動きとは対照的に、長期層の耐性は際立っている。市場参加者が恐怖に駆られた際に資産を手放す構図は、過去の急落局面でしばしば観測されたが、今回は異なる動きとなった。こうした冷静な行動は、市場の急落を抑制する「緩衝材」として機能する可能性があり、価格が暴落しづらい構造を形成しているとも言える。

従来、長期保有者の動向は底堅さを示す指標とされてきたが、特に今回のような地政学的リスクやマクロ経済の不透明感が強い局面では、その存在感がより強く意識される。売りが加速しても、一定層が冷静に構えることで、資産市場全体のパニック連鎖を防いでいる構図が浮き彫りとなった。

弱気トレンドの中で揺れる市場心理 マクロ要因と投資家の心理的分岐点

ビットコインの価格が8万ドルの節目を下回って推移している背景には、単なるテクニカルな調整にとどまらず、グローバル経済の緊張感が深く関与している。特に米国前大統領ドナルド・トランプによる関税強化の発言や、中国との摩擦再燃への懸念は、投資家心理を大きく冷え込ませている。これにより、暗号資産全体にリスク回避の波が広がり、アルトコインはビットコイン以上に大きな下落を記録した。

市場のセンチメントは明らかに慎重に傾いており、多くのアナリストはテクニカル面でのサポート割れを受けて、本格的な弱気相場入りを警戒している。ただし、同時に一部の専門家はHODLerの存在が今後の反転契機になり得るとも見ており、市場は悲観と期待が入り混じった複雑な状況にある。価格回復の鍵は、8万ドルの水準をいかに早期に明確に上抜けられるかにかかっており、85,000ドルのレジスタンスを目指すには強気勢力の戦略的な介入が求められる。

現段階では、短期的な反発材料は限られており、マクロ環境の改善が見られない限り、次の下落目標として7万ドル台が視野に入りかねない。ただ、構造的な売りが抑制されている今こそ、慎重かつ戦略的な判断が市場安定への第一歩になると見る向きもある。市場の命運を握るのは、強気派の次の一手と、投資家心理の微妙な分岐である。

Source:Bitcoinist.com