米Appleの株価が4月9日に15%以上上昇し、$198.85で取引を終えた。これは、厳格な関税措置が90日間一時停止されるとの報道と、トランプ大統領による関税免除検討発言を受けた動きである。トランプ氏は同日に、影響を受ける一部企業への対応について「検討するつもりだ」と記者団に明言し、Appleの名を挙げた。
過去にも同社は政権下で特別措置を受けた経緯があり、市場は再度の免除を強く期待している。サプライチェーンの大部分を中国に依存するAppleにとって、関税緩和は業績への影響が大きい。今回の株価急騰は、今後の政策動向次第でさらなる変動を迎える可能性を示唆している。
Apple株急騰の背景にある市場の緊張と安堵の交錯

4月9日のApple株は$171.95という安値から$198.85まで急上昇し、一日で15%超の上昇幅を記録した。この動きの直接的なきっかけは、世界的に最も厳しい関税措置が90日間停止されたという報道である。関税強化によって投資家心理が冷え込んでいた状況において、この報道は市場に一時的な安心感をもたらし、買い戻しの動きを強めた。
さらに注目すべきは、トランプ大統領が米国内の一部企業に対して関税プログラムからの免除を検討する意向を明らかにした点である。Annie Linskey氏が報じたように、大統領は「企業の性質上、厳しい状況にあるところもある」と述べ、個別対応に踏み込む可能性を示唆した。Appleのような巨大企業が名指しされることで、市場ではその発言の影響力がさらに高まった。
一方で、今回の株価上昇は回復基調の証左というより、投機的な動きと見るべきだろう。関税の恒久的な解除が決定されたわけではなく、免除についても実際の施行は不透明である。Appleの株価はなお、関税報道前の$200超の水準には戻っておらず、市場の警戒心が完全に払拭されたとは言い難い。
関税と製造戦略をめぐるAppleのジレンマ
Appleはサプライチェーンの中核を中国に据えており、これが同社の競争力の源泉であると同時に、地政学的リスクの最大要因でもある。過去にも関税問題が浮上するたびに、Appleは米中関係のはざまで戦略の調整を迫られてきた。今回の関税一時停止措置と、再び浮上した免除の可能性は、Appleにとっては単なる市場変動ではなく、事業運営全体にかかわる重要な分岐点となる。
トランプ大統領が述べたように、「5000億ドルを投じて工場を建設しようとしている」という発言は、Appleに国内製造回帰を促す強い政治的圧力と受け取れる。しかし実際には、Appleの高度に複雑化した製造工程を米国で再構築するには、時間とコストが膨大で、現実的な選択肢とはなりにくい。免除が実現したとしても、それは構造的な課題の解決ではなく、一時的な猶予に過ぎない。
今後、Appleが持続可能な製造体制を模索するうえで、関税政策だけに依存しないリスク分散戦略が求められる。東南アジアやインドへの一部製造移転といった取り組みは、政治リスクへの備えとして引き続き注目される分野であり、市場は単なる株価反発以上に、Appleの長期的な地政学的対応力を見極めようとしている。
Source:9to5Mac