AMDが新たなエントリー向けGPU「Radeon RX 9060 XT」の準備を進めていることが、韓国の国家電波研究機関によるGigabyte製カードのライセンス発行から判明した。型番からは8GBと16GBの2種が存在することが強く示唆されており、これまでの7600シリーズと異なる構成となる可能性が高い。

この動きは、GeForce RTX 5060 Tiが8GB・16GBの2モデル構成で市場投入されるとの情報と一致しており、AMDが同様の戦略で対抗姿勢を強める構えと見られる。16GBモデルの搭載は、近年要求が高まるグラフィックスメモリ容量への対応として注目される。

3月にはRX 9070 XTでRTX 5070を凌駕した実績もあり、今回の9060 XTも価格競争力を伴えば、低価格帯GPU市場において久方ぶりの本格的な競争の火蓋が切られる可能性がある。

Radeon RX 9060 XTにおける8GBと16GBの二重展開が示す市場戦略

韓国国家電波研究機関が発行したGigabyte製グラフィックスカードのライセンス情報により、AMDの新型GPU「Radeon RX 9060 XT」が8GB版と16GB版の二種類で展開されることが示唆された。この型番情報は、同機関に登録された「9060XT 8G」「9060XT 16G」というモデル名から明らかである。3月初旬にはAsus製の同名カードに関する情報も別の形でリークされており、複数メーカーによる同時進行的な展開が進んでいる可能性が高い。

AMDが同一GPUの複数メモリ構成を明確に打ち出すのは過去にも例があるが、今回の9060 XTでは「Gaming」ブランドのオーバークロックモデルとしての差別化が加えられている点が注目に値する。これは、従来のRX 7600とRX 7600 XTのように別製品として位置付けるよりも、構成差をもとに柔軟な価格帯を提供する意図がうかがえる。

メモリ容量がゲームの快適性や将来的な対応力に直結する中、同一モデルで8GBと16GBを選択できる構成は、価格感度の異なる層を同時に取り込む有効な施策となる可能性がある。NvidiaのRTX 5060 Tiも同様の二重構成を採用する見通しであり、競争の軸が性能だけでなくメモリ容量と価格戦略にも及ぶことを示している。


16GBモデル重視の可能性が示唆するメモリ戦略と市場の変容

現行のPCゲームタイトルは、4K解像度やレイトレーシングなど高精細化するビジュアル表現に伴い、VRAM使用量の増加が顕著となっている。この状況下でAMDがRadeon RX 9060 XTに16GBモデルを用意することは、単なるスペック差にとどまらず、今後のゲーム環境に対する備えとして重要な意味を持つ。対するNvidiaのRTX 5060 Tiも、リーク情報によれば16GB版が429ドルという比較的抑えられた価格で登場する可能性が報じられており、各社が容量重視のモデルを現実的な価格帯で打ち出す傾向が浮き彫りになってきた。

特に、Radeon RX 9070 XTが2025年3月にRTX 5070を性能面で凌駕した事実が、AMD製品への信頼感を再び市場にもたらしている。9060 XTも同様に、価格とスペックの両立が果たされれば、RTX 5060 Tiと真っ向から渡り合う展開が期待される。ただし、メモリ容量が多いことは理論上の優位性を示すものであり、実際のパフォーマンスはアーキテクチャやドライバ最適化にも左右される。

したがって、RX 9060 XTの16GB版が仮に主力モデルとして投入される場合、その成否は単なるスペック競争ではなく、プレイヤーの実体験に即したパフォーマンスと価格バランスが鍵となる。低価格帯市場における本格的な競争再開の兆しは、今後のGPU選定基準にも影響を及ぼすだろう。

Source:PCGamesN