Asusは最新のGPU制御ソフト「GPU Tweak III」において、ROG AstralおよびROG Matrixシリーズ向けに電源監視機能「Power Detector+」を新たに導入した。この機能は、電源コネクタのピンに過剰な電流が流れた際に警告を発することで、過熱やコネクタ溶解といった重大なハードウェア損傷を未然に防ぐ狙いがある。
この新機能は、過去に報告されたNvidia製GPUでの電源ケーブル溶解事故を受けての対応と見られ、特に高性能モデルであるRTX 5090や4090といったハイエンド製品におけるリスク軽減に資するものとされる。
なお、本機能は現時点では特定のAsus製GPUに限定されているが、同様の事故が他モデルでも確認されていることから、今後他社製品や一般ユーザー向けGPUにも普及が進む可能性がある。
高負荷GPUに潜む電源トラブル Asusの新機能が狙う実用的リスク回避策

Asusが発表した「Power Detector+」は、電源コネクタ内の各ピンに流れる電流をリアルタイムで監視し、異常な電流(たとえば9アンペア超や0アンペア)を検知すると警告を発する仕組みである。この機能はROG Astral(RTX 5090・5080)およびROG Matrix(RTX 4090)シリーズのみに限定されている。
とりわけこれらのモデルは高いTDP(熱設計電力)を要求し、オーバークロックによって電力供給が限界に達するリスクが高まることから、監視機能の搭載はタイムリーな措置といえる。
実際、NvidiaのハイエンドGPUであるRTX 4090では、12VHPWRコネクタにおける接続不良や過電流によるケーブルの溶解事故が複数報告されてきた。Asusの新機能はこうした物理的破損を未然に防ぐための一手であり、警告発生時には即座のPCシャットダウンと再接続確認が推奨されている。特筆すべきは、従来のモニタリングツールがベータ版や複数ソフトの併用を前提としていたのに対し、Asusが公式機能として統合した点である。
このようなハードウェアリスクへの能動的対処は、今後のGPU設計において重要な基準となる可能性がある。ただし現時点では対応製品が限定的であるため、より幅広いモデルへの展開が待たれるところである。
高性能化が招く構造的課題 電源モニタリングの今後と普及の壁
電源コネクタの異常監視は、理論上どのGPUにも必要な安全対策であるにもかかわらず、現時点でAsusの「Power Detector+」が限定的なモデルにしか対応していない事実は、設計上あるいはコスト面でのハードルを浮き彫りにしている。特に電流監視はソフトウェアのみならず、ハード側にも専用のセンサーやフィードバック回路を組み込む必要があることから、エントリーモデルや旧世代GPUへの搭載は現実的には困難とみられる。
一方で、ユーザー側の自主的な対策としては、HWiNFOやRivaTunerなどのツールを組み合わせる方法も存在しているが、これらは一部の上級者にしか使いこなせないうえ、安定性や信頼性の面でも課題が残る。Asusの公式機能化は、そうした限定的な手法に対する代替策としての価値を有しているが、いまだ対応製品がフラッグシップクラスに偏っている現状では、幅広い層に対する実効性には限界がある。
電力供給の適正化は、冷却設計や基板構造と並び、今後のGPU開発における中核課題のひとつとなるだろう。その意味で、今回のAsusの一手は先行的取り組みとして評価されるべきであり、他メーカーにおいても同様の安全機構が次第に標準化されていくことが期待される。
Source:TechRadar