NVIDIAは、次世代GPU「GeForce RTX 50シリーズ」の一部であるRTX 5070に、SK hynix製のGDDR7メモリモジュールを採用した。これは、これまでのSamsung製メモリチップからの明確な移行を意味する。SK hynixは、AI向けGPUでも高性能なHBMチップを提供しており、同社との連携強化が進んでいる。

RTX 5070はミドルレンジモデルでありながら、最先端の28〜32Gbps対応GDDR7メモリを搭載する初の事例となる。TechPowerUpの調査では、Samsung製メモリが依然として一部モデルに搭載されているが、今後はSK hynixの存在感が増す見込みだ。

NVIDIAはメモリ供給元に対して大きな裁量を持ち、AIとゲーミングの両市場で最適な性能と供給安定性を確保できるパートナー選定を進めている。今後数ヶ月以内に、SK hynix製GDDR7の採用拡大がさらに進行する可能性が高い。

SK hynixのGDDR7がRTX 5070に初搭載される背景

NVIDIAはGeForce RTX 5070を皮切りに、SK hynix製のGDDR7メモリモジュールを採用し始めた。これまで使用されてきたSamsung製GDDR7メモリからの移行は、供給安定性と性能の両面で戦略的な判断とみられる。RTX 5070は「Blackwell」アーキテクチャを採用するRTX 50シリーズのミドルレンジGPUでありながら、次世代メモリの初搭載対象として位置付けられている。

SK hynixはAIサーバー向けに提供するHBM3およびHBM3Eメモリチップにおいても高い信頼を得ており、NVIDIAのH100やB200といった主力AI GPUに採用されてきた実績がある。今回のGDDR7搭載も、同社のメモリ技術が広範な用途で優位性を持つことを反映している。NVIDIAは、AIとコンシューマー双方の領域でメモリパートナーを共通化することで、調達の効率化と品質の一元化を図っている可能性がある。

TechPowerUpの分析では、一部のRTX 5080にはSamsung製の「K4VAF325ZC-SC32」ユニットが用いられていることが明らかとなっており、供給元の完全な切り替えはなお過渡期にある。ただし、今後はSK hynixがGDDR7供給で存在感を高める方向性が鮮明になっている。

メモリ供給元選定に見るNVIDIAの市場支配力

NVIDIAは、GDDRやHBMといったメモリチップの供給元に対し強大な交渉力を保持している。AI GPU市場では事実上の寡占状態を築いており、その主力製品群にSK hynix製メモリを採用することで、パフォーマンスと供給体制の両面において最大の利を得てきた。この戦略はコンシューマー向けGPUにも波及しつつあり、RTX 50シリーズでもSK hynix製品の比重が高まっている。

特に、GDDR7は28〜32Gbpsといった高帯域幅に対応しつつ、安定した量産体制が要求される領域である。その中でNVIDIAがSamsung以外の選択肢を本格的に運用する姿勢は、単なる技術的選定にとどまらず、供給網全体の再編にもつながる動きと捉えられる。今後、Micronを含めたメモリメーカー間の競争環境にも影響が及ぶ可能性がある。

NVIDIAの選定方針は、製品ポートフォリオの中でどのグレードにどのメモリを搭載するかという、精緻な戦略に裏打ちされている。SK hynixのGDDR7搭載は、単に性能を追求した結果ではなく、長期的な製品ロードマップとサプライチェーン戦略の結節点と見ることができる。

Source:TweakTown