NVIDIAは、Verified Priority Access(VPA)プログラムが終了したとするReddit上の投稿について、誤った情報であると公式に否定した。発端は、同社のカスタマーサポート担当者が「VPAはすでに終了した」と誤って案内したことにあるが、NVIDIAはその後、RTX 5090・5080・5070 Founders Editionの正規価格販売は引き続き可能であると表明した。
このプログラムは、2025年1月30日以前にアカウントを作成した米国在住ユーザーを対象とし、メーカー希望小売価格での購入機会を提供するものである。ただし、対象者の選定はアルゴリズムによって行われ、招待制での販売となるため、価格保証を意味する制度ではない点には留意が必要だ。
NVIDIAによれば、VPAは一時的な措置でありながら、プレミアムGPUの入手困難や価格高騰に対応する重要なチャネルとして継続運用中であるという。
誤情報の発端とNVIDIAの迅速な対応

VPAプログラム終了の誤情報は、Redditに投稿された1枚のスクリーンショットから広まった。あるユーザーがNVIDIAカスタマーサポートに問い合わせた際、「VPAは終了した」との返答を受け、そのやり取りを公開した。これが複数のフォーラムやSNSで拡散された結果、一部ではVPAが正式に打ち切られたとの誤認が広がった。しかしNVIDIAは即座に当該投稿にコメントし、VPAは継続中であると否定した。
この素早い訂正により、情報の混乱は最小限に抑えられた。ユーザー対応の現場と企業の公式見解に食い違いが生じたことは、企業としての内部情報伝達の精度を問う要素となる。事実、誤った案内が一個人の投稿をきっかけにネット全体に影響を与える構図は、今日の情報社会が抱える典型的なリスクを浮き彫りにしている。NVIDIAのような大手であっても、顧客対応の一言が信頼に直結することは改めて明らかとなった。
VPAの制度設計と対象ユーザーの限定性
VPA(Verified Priority Access)は、RTX 5090・5080・5070 Founders Editionの購入を希望するユーザーに向けて導入された特別枠であり、NVIDIAアカウントを2025年1月30日以前に作成していた米国在住者のみが対象となる。
加えて、購入権は申請者の中からアルゴリズムによって選出され、当選者にのみ招待メールが送られる仕組みである。製品はNVIDIA公式ストアにてメーカー希望小売価格(MSRP)で提供され、転売や価格高騰への抑制策としての一面も持つ。
この制度は対象条件が極めて限定的であり、多くの潜在的な需要を包含しきれていないとの指摘もある。特に米国外のユーザーや新規アカウント保有者は排除されており、入手経路が事実上閉ざされている状況が続く。制度の意図が短期的な市場安定化にあるとすれば、長期的には公平性や国際的な流通整備に課題が残される。VPAは透明性よりも効率と限定性を重視した施策と位置づけられ、ハイエンドGPUの流通構造の一断面を示している。
市場におけるVPAの意義と限界
VPAプログラムの背景には、RTXシリーズに対する過剰需要と流通の不均衡という構造的問題がある。特にフラッグシップであるRTX 5090および5080においては、発売直後から入手困難が続き、MSRPを大きく上回る価格での転売が常態化していた。
NVIDIAはこの状況を是正すべく、限られたユーザーに正規価格で購入機会を与える施策としてVPAを打ち出した。しかしその性質上、対象外のユーザーにとっては不公平感を伴う制度ともなりうる。
一方で、一定の信頼基盤を持つ既存ユーザーに優先権を付与するこの手法は、ファン層との関係維持や、ブランドロイヤルティの醸成にも寄与していると考えられる。ただし、選定プロセスの非公開性や対象地域の限定は、グローバルな購買行動と乖離を生む可能性がある。VPAは需給のアンバランスに対処する一つの戦術ではあるが、恒常的な解決策として機能するには、今後の制度拡張や地域展開の再設計が不可欠である。
Source:Wccftech