トランプ大統領が56カ国への報復関税を90日間停止し、主要企業への免除措置を示唆したことで、米株市場は急反発。S&P500は+9.52%、ナスダック100は+12.02%、主要先物も軒並み10%前後上昇した。テスラ、エヌビディアなど「マグニフィセント・セブン」は軒並み二桁の上昇率を記録し、半導体やエネルギー、旅行株まで全面高となった。
一方で、市場では中国や欧州の報復関税、金利急騰、ドル資産売却など金融不安の火種が依然としてくすぶる。FOMCはスタグフレーション懸念を示し、FRB高官も利下げが困難であると警戒を表明。株高の裏側では政策対応の限界と国際的な資本リスクが浮き彫りとなった。
株価急騰の背景にある関税政策の転換と市場の即時反応

4月9日、トランプ大統領は56カ国への報復関税を90日間停止し、対象国への関税率も10%に統一すると発表した。これに市場は即座に反応し、S&P500が+9.52%、ナスダック100が+12.02%、ダウ平均も+7.87%上昇するなど、主要指数が軒並み急騰した。E-mini先物もS&Pで+9.62%、ナスダックでは+11.90%と大幅上昇し、リスク回避から一転、買いが殺到する展開となった。
とりわけ、テスラやエヌビディア、アップルなど「マグニフィセント・セブン」と呼ばれる米巨大テック株が2桁上昇を記録。さらに半導体関連、旅行・レジャー、エネルギー株へと上昇は波及し、短時間で市場全体が巻き込まれる構図となった。背景には、金利高騰やドル資産売却という緊張感がある中で、政権の譲歩が市場の過度なリスク認識を一時的に緩和させたという構図が見える。
この一連の急反発は、関税という不透明な圧力要因の緩和によって資金が一気にリスク資産に流れ込んだことを示しており、市場の神経質なセンチメントが極めて政策依存であることを物語っている。
貿易報復の連鎖と債券市場の警戒感が示す中長期リスク
中国はトランプ政権の関税停止を受けても即座に84%の関税で対抗し、米国も中国製品への課税を104%から125%へと拡大。EUも210億ユーロ相当の米製品に対し25%の関税を課した。為替市場では人民元が17年ぶりの安値を更新し、ドル建て資産からの資金流出が進行。特に日本による米国債売却の報道は、10年債利回りの4.511%への急上昇を招いた。
このような動きは、米国が関税を外交戦略の道具とする一方で、中国やEUが資本市場と為替を武器に反撃する構図を示す。米国の高水準の財政赤字に加え、国債市場の不安定化は政策対応力の限界を映し出しており、米国内の経済基盤にも圧力を与える可能性がある。
また、FOMC議事録では「インフレリスクの上昇と雇用の低下」が指摘され、ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁は関税が利下げを困難にするとの見解を示した。金利政策の柔軟性が失われる中での市場上昇は、持続性のある成長とは異なる性質を帯びており、株高の裏には拭えぬ不安が存在している。
Source:Barchart.com