Pfizer(ファイザー)の株式に対して、5月2日満期・ストライク価格20ドルのプットオプションが12,000件超取引されるという異例の動きが発生した。取引価格より約5.7%下の価格帯で大量に成立したこの動きは、短期的に9%以上の株価下落を見込む投資家心理を反映している。
背景には、中国による報復関税の示唆と、米トランプ政権が医薬品輸入に新たな規制をかける可能性が報じられたことがある。ファイザーは中国に戦略的拠点を持ち、この関税応酬の影響を直接受ける立場にある。
加えて、2025年の売上予測が昨年比で減少見込みである点や、4月29日の決算発表を控えた市場の不安も影響しており、短期的な下方リスクに備える動きが一段と顕著となっている。
プット取引急増の背景にある米中関係と政策不確実性

2025年5月2日満期のファイザー株プットオプションに12,000件超の取引が集中し、プレミアムも1契約あたり0.75ドルと高水準を維持している。この水準は、21.20ドルという現行価格から19.24ドルへの下落、すなわち9.25%以上の調整を想定した水準にあたり、相応の弱気な見通しを前提としている。
この動きの背景には、米国による対中関税強化に対する中国政府の報復関税示唆があり、医薬品市場を含む国際サプライチェーンへの影響が無視できない状況にある。特にファイザーは、中国国内における製造・研究拠点を有しており、両国間の関税応酬が同社のオペレーションに直接的な打撃となり得る構図である。
加えて、トランプ政権が今後医薬品の輸入規制を強化するという報道が浮上しており、こうした地政学的・政策的な不確実性の複合が、短期的な株価下落の可能性を織り込む投資行動を誘発している。過去1カ月で20%以上も下落した同社株への警戒が一層強まる状況にある。
オプション市場に映る市場心理と収益見通しの連動
ファイザーの直近株価は3月7日以降、26.73ドルから20.50%下落しており、21.20ドルまで落ち込んだ。本日取引された12,000件超のプットは、ストライク価格20ドルという水準から見て「アウト・オブ・ザ・マネー(OTM)」の位置付けにある。にもかかわらず高いプレミアムがついているのは、短期間での急落を意識する参加者が増加しているためと考えられる。
こうしたオプション取引の偏りは、短期的な価格変動だけでなく、ファイザーの業績見通しにも密接に関係している。すでに2025年の売上予測は前年の636.3億ドルから629億ドルへと下方修正されており、売上減少が利益やキャッシュフロー、さらには株価評価に波及する懸念が根強い。
4月29日に予定される決算発表において、仮に売上のさらなる弱気な指針が示されれば、市場はそれを織り込みにいく形でPFE株を一段安に押し下げる展開も否定できない。今回のオプション動向は、こうしたリスクを先回りする動きとして、極めて市場心理を的確に映し出している。
Source:Barchart.com