米国市場が関税問題による不安定な地合いにある中、半導体大手Nvidiaの株価が反発を見せている。年初来で25%超の下落が続く一方、今週は一時5%高を記録し、反発トレンドに転じたとの見方もある。

著名投資家キャシー・ウッド氏が今週34万株超を追加購入したことが報じられた。AI向けハードウェアの圧倒的な技術優位に加え、22倍未満のPERというバリュエーションの割安感が再評価されている。

ロボティクスや自動運転など多面的な収益基盤も注目される中、市場の混乱を長期的な投資機会と捉える動きが広がりつつある。

AI分野での優位性が支えるNvidiaの反発基調

NvidiaはAI向けハードウェア市場で依然として圧倒的な存在感を放っている。大手テクノロジー企業がデータセンター拡張への投資を一時的に抑制している中にあっても、NvidiaのGPUはAIモデルの学習・推論に不可欠であり、基盤技術としての需要は根強い。特にAI分野の進展に伴い、演算能力への要求は高まる一方であり、Nvidiaの技術ポートフォリオは今後も競争優位を保ち得ると評価されている。

加えて、同社の成長はAIチップに限定されず、ゲーム、ロボティクス、自動運転分野でも堅調な売上を見せている点が注目される。これら複数の事業領域にわたる収益源の多様性は、市場のボラティリティに対する耐性として機能しやすい。こうした背景のもとで、年初来の下落幅が大きいにもかかわらず、今週に入っての株価の反発は単なる一過性の動きではないとの見方がある。

ただし、短期的には貿易摩擦や金利動向といった外部環境の変動に引きずられる可能性が否定できず、安定的な成長軌道に乗るには時間を要する局面とも言える。したがって、今回の株価上昇は、Nvidiaの中長期的なファンダメンタルズを再評価する投資家の姿勢を反映したものであり、市場全体のセンチメントとは一線を画している。

キャシー・ウッドの大量買いに見る機関投資家の戦略転換

Ark Investの創業者であり、ポートフォリオ・マネージャーとして知られるキャシー・ウッド氏が今週、Nvidia株を34万株以上買い増した。これは市場における明確なシグナルとして捉えられている。彼女の投資スタンスは常に高成長企業への長期投資に重きを置いており、今回の買い増しはNvidiaが依然としてその基準に適合すると判断された結果と見られる。市場が不安定な中、同氏のような機関投資家がリスクを取って資金を動かした点は注目に値する。

特筆すべきは、現在のNvidia株が昨年末と比較して割安な水準にあるという点である。予想利益ベースのPERが22倍未満という評価は、ハイテクセクターの中では相対的に控えめであり、今後の業績下振れリスクをある程度織り込んだ価格帯とも解釈できる。これは、短期的な値動きよりも、長期的なキャッシュフローや技術基盤に着目する機関投資家にとって魅力的な水準である。

しかしながら、ウッド氏の戦略がそのまま他の投資家にとって妥当かどうかは慎重に見極める必要がある。同氏の投資哲学は市場全体とは異なるリスク許容度に基づいており、Nvidiaに対する評価も一部の投資家にとっては過大と映る可能性がある。とはいえ、今回の動きは、主要プレイヤーによる戦略的な資金移動の一端として、今後の市場動向に一定の影響を及ぼす可能性を秘めている。

Source:The Motley Fool