トランプ政権による関税政策の発表を契機に市場が大幅下落し、アップルは時価総額で3兆ドルの大台から脱落するなど深刻な影響を受けた。対照的に、マイクロソフトは同様の逆風を受けながらもアップルとの差を急速に縮め、一時的に世界首位の座を奪還する場面も見られた。
ナスダック総合指数が13%下落する中、関税対象国に製造基盤を広げるアップルの構造的リスクが顕在化し、株価の連続下落に拍車をかけた。一方、マイクロソフトにはAI需要や新市場参入への期待が根強く、成長戦略への評価が株価を下支えしている。
RBCキャピタルによる510ドルの目標株価が示すように、同社に対する市場の信頼は揺らいでいない。米主要テック株が軒並み打撃を受ける中で、マイクロソフトの安定性と成長余地が再評価されている。
アップルの脆弱性が浮き彫りに 関税依存と製造拠点リスク

市場全体がトランプ前大統領による新たな関税政策の発表で動揺する中、アップルは製造拠点の地理的偏在により最も深刻な打撃を受けた。中国を中心に、インド、ベトナム、ブラジルといった新興国にも製造網を拡大していたが、これらの国々が一様に関税対象となったことで、コスト増と供給網の不確実性が顕在化した。
iPhoneの売上を中核とするアップルにとって、製造遅延や価格競争力の低下は株価への直撃弾となる。実際に同社は4営業日連続で売りが優勢となり、3兆ドル超だった時価総額は急速に目減りした。短期的な回復を見込む声もあるが、サプライチェーン戦略の見直しが急務であることは明白である。
グローバル企業であるにもかかわらず、アップルの供給体制が政治リスクに極めて脆弱であることは今回の市場変動で明らかとなった。新たな経済政策への対応力、すなわち地政学的リスクへの備えが、今後の企業評価を左右する重要な尺度となる可能性は否定できない。
マイクロソフトが再評価される背景 AIと成長戦略が投資家心理を支える
市場全体がテック株を中心に調整局面にある中で、マイクロソフトには安定成長銘柄としての評価が再び強まりつつある。木曜日の一時的な首位奪還に象徴されるように、アップルとの時価総額の差は1億ドル未満にまで縮小し、RBCキャピタルはMSFTの目標株価を510ドルとする強気の見通しを提示した。
その背景には、同社が推進する人工知能分野への投資拡大と、新たな市場領域への戦略的な参入がある。AIはすでに今年の市場テーマの一つとして注目されており、マイクロソフトが展開するクラウド基盤や業務用アプリ群との連携が、成長性への確信を生んでいる。また、大型の収益源であるWindows部門も依然として安定的な収入基盤を維持しており、不確実性の高まる局面で投資家の心理的支柱となっている。
目立った急騰がない一方で、着実に株主価値を積み上げる経営姿勢が今、市場で再評価されている。短期の値動きではなく、中長期的な企業体質への視点が問われる局面において、マイクロソフトはその存在感をさらに強めている。
Source:Watcher Guru