マイクロソフトは、Windows Insider向けに提供するCopilotの最新アップデートで、ファイル検索機能と「Copilot Vision」を追加した。前者は.docxや.pdfなどの多様なファイル形式を横断検索でき、自然言語による指示にも対応。後者は画面を視認し、操作案内や内容解説まで可能とする。

両機能は初期段階では一部地域とユーザーに限定されるが、正式導入されれば、業務効率化に資する機能として注目を集める可能性がある。

ファイル検索を再定義するCopilotの進化

今回のアップデートで、Windows Copilotは.docx.xlsx.pdf.jsonなど多様なファイル形式を横断的に読み取り、自然言語でのファイル検索を可能にした。ユーザーは「昨日のプレゼン資料を開いて」などと話しかけるだけで、PC内のストレージ全体を対象に目的のファイルを即座に探し出せる。加えて、AIが読み取るファイル内容の範囲は、ユーザーがアクセス許可を設定可能であり、プライバシーへの配慮もなされている。

従来のWindows標準検索機能は、検索精度の低さやインデックス処理の煩雑さにより、業務利用における効率性を欠くという課題があった。Copilotの実装は、こうした根本的な不便をAIによって克服するものである。特に知的生産の現場では、過去の資料や関連文書への迅速なアクセスは意思決定のスピードに直結する。今回の改善により、Windows環境における情報活用の形が大きく変わる可能性がある。

アプリ操作を変えるCopilot Visionの衝撃

「Copilot Vision」は、アプリやブラウザの画面をAIが視認し、内容の分析や説明、さらには操作手順のナビゲートまで行える新機能である。たとえば「Excelでセルを結合するには?」と問いかければ、現在の画面を参照しながら具体的な操作方法を示すことができる。操作に不慣れなアプリであっても、ステップバイステップのサポートにより作業の停滞を回避できる点が特徴である。

一方で、ユーザーの作業画面をAIが読み取るという性質上、プライバシーや情報漏洩への懸念が生じるのも事実である。しかし「Copilot Vision」はユーザー操作によって明示的にオン・オフを切り替える仕様であり、常時監視されるわけではない。この点は、かつて議論を呼んだWindows Recall機能と決定的に異なる。高度化するアプリ群の中で、視覚情報を活用するAI支援は今後のUI設計にも影響を与える技術であり、その活用範囲は拡大が見込まれる。

NPU非搭載デバイスの行方と技術的分断の兆し

今回のアップデートにより注目されるのは、これら新機能がすべてのWindowsデバイスで利用可能か否かという点である。マイクロソフトは「Copilot Vision」や強化されたファイル検索機能の提供範囲について、現段階では明言を避けており、ハードウェア要件、特にNPU(Neural Processing Unit)の必要性についても触れていない。もしNPUの搭載が前提となれば、旧世代のCPU環境を使用している膨大なユーザー層が利用の対象外となる可能性がある。

これは、最新機能の恩恵を享受できるユーザーと、取り残されるユーザーとの間に新たな格差を生みかねない事態を意味する。特に業務用途でのPC買い替えサイクルが長期化する中、この分断はIT投資判断にも影響を及ぼす。AI機能の本格実装が進むにつれ、ハードウェア環境の再整備は避けて通れない課題となる。技術革新と利用現場とのギャップをどう埋めるか、企業や個人のリテラシーが問われる局面に差し掛かっている。

Source:MakeUseOf