Microsoftが開発を進める「Command Palette」が、従来のスタートメニューを凌駕する操作性と自由度で注目を集めている。PowerToysに統合されるこの新機能は、任意のブラウザや検索エンジンを使用可能で、BingとEdgeへの誘導を回避できる設計となっている。
アプリ起動やウィンドウ切替に加え、カスタムショートカットや拡張機能にも対応し、ユーザーの作業効率を大幅に引き上げる潜在力を秘めている。広告を排除し、ユーザーの選択を尊重する姿勢も高評価を得ている。
Command Paletteは現時点でPowerToysの一部として提供されており、バージョン0.90.0以降で使用可能。今後Microsoft Store経由での拡張機能追加も予定されており、Windows 12への正式統合の布石とも見られている。
PowerToys Runの進化形として登場したCommand Paletteの実力

Microsoftが2024年にリリースしたPowerToysのバージョン0.90.0に統合されたCommand Paletteは、従来のスタートメニューに代わる次世代ランチャーとしての存在感を高めている。このツールは、Windows + Alt + Spaceで起動可能な検索ボックスを中心に構成され、アプリの起動、ファイルの検索、ウィンドウの切り替え、さらにはWeb検索や計算処理まで、幅広い機能を瞬時に呼び出すことができる。
注目すべきは、検索結果の扱いにおいてBingやEdgeへの強制誘導を避け、ユーザーが設定したデフォルトのブラウザと検索エンジンを反映させる仕様にある。従来のスタートメニューでは実現し得なかった“選択の自由”が、ここに初めて導入された。さらに、検索タイプに応じたショートカットの割り当てや、Caps Lockキーを起動キーに再マッピングできる柔軟性も、操作性の高さを裏付けるものといえる。
現在は公開されていないが、Microsoft Store経由での拡張機能追加も視野に入れた構造設計となっており、今後のアップデートによってその機能性はさらに広がると考えられる。Command Paletteは、単なる小機能にとどまらず、WindowsのUI設計の方向性を変える可能性を秘めた中核的ツールとなりつつある。
ユーザーの選択を尊重するUIはMicrosoftの戦略転換の兆しか
Command Paletteの最大の特徴は、Microsoftが自社サービスへの誘導を行わず、ユーザーが設定したブラウザや検索エンジンをそのまま使用できる点にある。この点は、従来のスタートメニューに見られたBingやEdgeの優先表示とは明らかに一線を画しており、企業のサービス囲い込み方針に一定の変化が生じた可能性を示唆している。
これまでのMicrosoft製品は、一貫して同社のサービスエコシステム内にユーザーを引き込む設計思想が色濃く反映されていた。しかし、Command Paletteではその手法をあえて避けている。この構造には、プロフェッショナルユーザー層の信頼獲得と製品満足度の向上を目的とした、機能本位の開発方針がうかがえる。広告要素の排除も、純粋な生産性向上を追求する姿勢の表れと受け取れる。
ただし、こうした自由度の高さが今後も維持されるかは不透明である。マーケティング部門の介入や企業戦略の変化次第では、再びMicrosoft独自サービスへの誘導が強化される可能性も否定できない。その意味で、Command Paletteは現在“静かな自由”が許された過渡期的ツールであり、今後の展開が注視される。
Source:Computerworld