MediaTekは、ARM Cortex-X925の動作周波数を3.73GHzへ引き上げたDimensity 9400+を正式発表した。昨年登場したDimensity 9400の改良版とされ、AI性能向上を主眼としたアップデートとなっている。NPU 890は引き続き搭載され、Speculative Decoding+技術によってエージェント型AIの性能は最大20%向上し、AIアプリケーションの高度化を容易にしている。

搭載端末としては、Oppo Find X8s/X8s+、vivo X200sなどが挙げられており、今後のハイエンドAndroid市場への展開が注目される。ただし、GPU構成や通信規格、メモリ仕様などは前モデルと同一であり、差異は限定的である。市場ではこの小幅な改良の意図と、エージェント型AI活用への布石とみる声もある。

Cortex-X925採用とエージェント型AI最適化による性能向上

Dimensity 9400+は、最大3.73GHzで動作するCortex-X925を採用することで、従来のDimensity 9400に対し約100MHzの周波数向上を実現した。このわずかな向上により、シングルスレッド性能の改善が見込まれ、特に負荷の高いアプリケーションで応答性の向上が期待される。

また、MediaTekが強調するNPU 890の活用により、Speculative Decoding+技術を通じたAI処理の高速化が図られており、エージェント型AIの応答性能は20%向上したとされる。これは、AIによるタスクの自律処理や会話生成といった処理系において、開発者が大規模な再設計を要さずに高度化を図れることを意味する。

こうした仕様は、スマートフォンを通じたエッジAI活用の加速と密接に関係しており、端末単体での自然言語処理や画像認識などが、クラウド依存度を抑えて高精度かつ高速に実行されることを想定している。

ただし、AI処理以外のCPU・GPU・通信機能・ディスプレイ対応などの仕様に変更がないことから、全体としては限定的な強化にとどまり、戦略的には「エージェント型AIの波に即応した最小改修」との見方が妥当であろう。

Oppoおよびvivo端末に採用される狙いと差別化の課題

Dimensity 9400+の搭載端末として、Oppo Find X8sおよびFind X8s+、vivo X200sの名が挙がっている。いずれもハイエンド市場に位置づけられるモデルであり、MediaTekにとってはSnapdragon 8 Gen 3など他社フラッグシップSoCとの競争において、差別化の糸口をAI処理能力に求めた構図が浮かび上がる。

Cortex-X925の採用やNPU 890の再評価を通じて、vivoやOppoといった主要ブランドの競争力を支える選択肢として投入された可能性は否定できない。ただし、GPU性能や通信周りの構成に新規性がない点は、エンドユーザーから見た明確な進化とは捉えにくく、購買動機を左右する決定打にはなりにくい。

特に、既存の9400搭載モデルとの比較において、スペック表上では顕著な差異が見出しにくいため、ブランド訴求力やAI機能を活用したソフトウェア体験の差別化が不可欠となる。MediaTekとしては、単なる周波数向上版という枠を越え、AIを軸とした“体験価値”の再定義をメーカーと共に進められるかどうかが、今後の評価を左右することになろう。

端末ベンダー側も、SoCの性能強化に依存するのではなく、AI応用領域でのUI/UX設計における差別化戦略を迫られている。

Source:GSMArena.com