2025年第1四半期、韓国サムスン電子が33年にわたって維持してきたDRAM市場の首位から陥落した。新たに首位に立ったのは同じく韓国のSKハイニックスであり、HBM(高帯域幅メモリ)分野での圧倒的な優位性がその原動力となった。

特にAIサーバー向けに不可欠なHBM3EでNVIDIAの大量受注を獲得したことが決定打となり、SKハイニックスは36%のシェアで市場をリードしている。

SKハイニックスのHBM戦略がサムスンを凌駕した背景

SKハイニックスは2025年第1四半期、DRAM市場で36%のシェアを獲得し、サムスンを2ポイント上回る結果となった。中核となったのは、高帯域幅メモリ(HBM)分野における技術力と供給体制である。特にHBM3Eモジュールにおいて、AI分野の需要急増に応じた生産能力と品質を確保し、NVIDIAの主要サプライヤーとしての地位を築いた。

HBMはAIサーバーに不可欠な構成要素であり、今やDRAM市場の中でも戦略的価値の高い領域とされている。一方、サムスンはHBM3Eの品質・生産面で課題を抱え、NVIDIAの調達網に参入できなかった。これは、製造プロセスの成熟度と顧客の信頼という点で差が生じた結果といえる。

市場調査会社カウンターポイント・リサーチによれば、SKハイニックスはHBM分野で70%という圧倒的なシェアを握っており、その支配力は短期的な勢いを超えたものとなっている。サムスンの長年のリーダーシップが崩れた背景には、技術革新と市場対応の速度における優劣が明確に表れている。

AIブームがHBM市場の構造を変えた可能性

HBMは従来のDRAMと異なり、処理速度と消費電力のバランスに優れており、AI処理に特化した用途でその真価を発揮する。AIサーバーの拡大に伴ってHBMの需要が急増し、従来型DRAMよりも戦略的価値が増している。これにより、HBMの供給力と技術力が、DRAM市場全体における競争力の中核に移行しつつある。

2025年第1四半期の市場データが示す通り、SKハイニックスのHBM優位がそのままDRAMシェアの逆転に直結した。短期的には、AI関連需要が関税や地政学リスクといった外的要因の影響を吸収する形で市場を押し上げているとされるが、中長期ではサプライチェーンの脆弱性や価格競争が成長の足かせになる可能性もある。

とりわけHBMの製造は高度な技術を要し、製造歩留まりの安定確保が収益性を左右する。サムスンはHBM4の早期量産計画を打ち出しており、次世代メモリ技術への移行が今後の競争の鍵を握ることになる。HBMを軸に据えた市場構造の転換が、各社の戦略を根底から変え始めている。

Source:SamMobile