保守系ニュースネットワークのNewsmax(NMAX)は、2025年第1四半期に前年比50%の視聴者数増加を記録し、米国ケーブルテレビ市場で第5位の視聴率を獲得した。上場初日に株価が700%上昇し、最高265ドルまで急騰したが、現在は30ドル未満で取引されている。視聴者リーチの拡大や多様な収益源への展開が今後の成長要因とされる一方、2024年の運営費は1億5,400万ドルに達し、依然として赤字を抱える点が課題である。

急騰から急落へ転じたNMAX株の乱高下と視聴者数拡大の実態

Newsmax(NMAX)は2025年3月31日の上場初日、株価が700%も急騰し、続く2日間で累計1,000%以上の上昇を記録したが、その後は急速に値を下げ、現在は30ドル未満で取引されている。この値動きの背景には、上場に際しての強い投資家関心と異常な出来高があった。IPOにより7,500万ドルを調達し、クラスB株を1株10ドルで発行したことからも、上場時点での期待感は極めて高かったといえる。

一方、同社は2025年第1四半期に3,360万人の視聴者数を記録し、前年比で50%の増加を達成した。ニールセンの視聴率によると、Newsmaxはケーブルチャンネル全体で5位に浮上し、Fox Newsを視聴していない800万人のケーブルユーザーがNewsmaxを視聴していたことも明らかとなった。特に「トータル・デイ」視聴者数は過去5年間で690%、プライムタイムは1,027%の伸びとなっており、番組単位でも「Carl Higbie FRONTLINE」が前年比45%増、「Chris Plante The Right Squad」が33%増となっている。

このように、株価の短期的な急騰とは対照的に、視聴者基盤の拡大は着実な数値に裏打ちされている。ただし、この視聴者成長が継続的な収益や利益につながるかは別問題であり、短期的な株価変動が企業実態を過大評価させていた可能性を否定できない。

Newsmaxの成長戦略における多面的収益モデルと赤字体質の課題

Newsmaxは、ケーブルテレビ、デジタル配信、ストリーミング(Newsmax+やNewsmax2)、SNS、印刷媒体といった複数チャネルを統合したマルチプラットフォーム型の事業モデルを採用している。SNSでは約2,000万人のフォロワーを擁し、アプリの累計ダウンロード数も1,600万件に上る。さらに、広告、定期課金(サブスクリプション)、Eコマースによる収益の多角化も進めており、2024年の売上は4,200万ドルから年内には1億7,100万ドルへと急拡大した。

このような収益基盤の整備は、Fox Newsといった競合との視聴者シェア争いにおいて優位性を生み出すと同時に、今後の拡張余地を示唆している。特に、現在は低水準にあるケーブルライセンス料の引き上げが実現すれば、固定収益の増強につながる可能性がある。しかしながら、収益増加に比例して運営コストも増加しており、2022年に7,840万ドルだった支出は2024年には1億5,400万ドルと倍増した。現時点では依然として収益より支出が上回る構造となっており、財務面の脆弱性が残されたままである。

成長に伴う投資と支出の拡大が必要不可欠である一方で、収益性の改善を伴わない場合、投資家の評価は慎重にならざるを得ない。視聴者の増加と収益構造の強化が継続的に実現されるか否かが、今後の株価推移と企業の信頼性を左右するだろう。

Source:Barchart