Broadcom株(ティッカー:AVGO)は、2025年4月9日にトランプ大統領が90日間の報復関税停止を発表したことを受けて一時20%近く急騰したが、翌日には反動で約8%下落した。投資家の注目は、短期的なボラティリティの先にある中長期的な収益構造と成長性に移っている。Broadcomは2025年第1四半期に売上高149.2億ドル、利益1.60ドルを計上し、いずれも市場予想を上回る好調な決算を発表。

AIインフラを支えるPCIe Gen 6やTomahawk 6スイッチなど高性能ネットワーク製品を中核に据え、次世代のクラウド・データセンター需要を取り込む戦略を加速している。さらにVMware買収を通じたインフラソフトウェア分野の拡張も進み、GPU仮想化を可能にするAI対応基盤「VMware Private AI Foundation」が企業から高評価を得ている。アナリストの評価は依然として強気で、目標株価は平均248ドル、現在価格から45%の上昇余地があるとの見解が示されている。

急騰から反落へ Broadcom株価の乱高下に影響した政策要因と市場反応

2025年4月9日、ドナルド・トランプ大統領が報復関税を90日間一時停止する方針を発表したことで、Broadcom(AVGO)の株価は一日で20%近く急騰する異例の値動きを見せた。この措置はNvidiaやQualcomm、AMDといった同業他社にも波及し、半導体セクター全体にリスク緩和の期待が広がったが、翌10日には熱狂が収束し、Broadcom株は8%の反落を記録している。

この一連の急変動は、政策主導の相場形成がいかに投資家心理を左右するかを如実に示すものであり、短期的な利益確定売りも重なったと見られる。背景には、米中間の技術摩擦が依然として緊張感を保っていることもあり、今回の関税凍結が恒久的な措置と見なされていないことが投資家の警戒を呼んだ。

Broadcomにとってこの市場環境は、AI関連製品への依存度を高める転機とも重なる。AIサーバー向けネットワーク機器やアクセラレータ向けインフラの需要増加が株価に反映される構図は、中長期的な成長期待を内包している。しかし、短期的には政治的要因による株価の変動性が無視できないことも明白である。市場参加者は今後、政権の貿易政策の持続性と企業ファンダメンタルズの双方を厳格に見極める必要がある。

AI・クラウドの中核へと転じるBroadcomの技術戦略と資本力

Broadcomは2025年第1四半期決算において、売上149.2億ドル(前年同期比25%増)、利益1.60ドル(同46%増)を記録し、アナリスト予想を上回る実績を示した。粗利益率は68%に上昇し、営業キャッシュフローおよびフリーキャッシュフローも前年を大幅に超過。保有現金93億ドルは短期債務を大きく上回り、極めて健全な財務体質が明らかとなった。さらに、2025年第2四半期の売上ガイダンスは149億ドルとされ、前年同期比で19.2%の増収を見込んでいる。

技術面では、PCIe Gen 6インターコネクトやTomahawk 6スイッチなど、次世代AIインフラ構築を担う高性能ネットワーク製品の投入が際立つ。これらの製品は64Gbpsのデータ伝送速度やレイテンシーの大幅低減を実現し、AIアクセラレータの運用効率を飛躍的に向上させる。

ハイパースケールクラウドの拡張期と重なる技術展開により、BroadcomはAI時代の中核的部品供給者としての地位を固めつつある。2ナノメートルAI XPU開発など、研究開発への継続的投資も競争優位性の維持に貢献している。売上・利益・技術・資本すべてにおいて強固な地盤を有しており、中長期の成長路線はより明確になった。

インフラソフトウェアとAIの融合 VMware買収が示す成長の新局面

Broadcomは半導体事業だけでなく、インフラソフトウェア分野でも大きな転換点を迎えている。VMwareの買収を経て、同社はサブスクリプション型モデルへの移行を加速。2025年第1四半期末時点で、顧客の60%超が定期購読モデルを採用し、企業1万社のうち約70%が「VMware Cloud Foundation(VCF)」を導入済みである。これは、AIワークロードをオンプレミスで管理したいという企業ニーズの高まりと整合しており、Broadcomはその需要を的確に捉えている。

特筆すべきは、Nvidiaとの協業による「VMware Private AI Foundation」の展開である。このプラットフォームはGPUインフラの仮想化を可能にし、データ主権やセキュリティが重視される領域において高い評価を得ている。すでに39社が導入を完了しており、自動化、可用性、負荷分散に優れた構成が評価されている。

クラウドとオンプレミスを接続するハイブリッドAI基盤の整備は、今後のITインフラ構造そのものを変える可能性がある。Broadcomはハードウェアとソフトウェアの相乗効果を最大化しながら、企業のAIトランスフォーメーションを支援する重要な立場を確立しつつある。

Source:Barchart.com