Altimeter CapitalのCEO、ブラッド・ガーストナーがNvidia株を15%増やしたことが明らかとなった。米中関税問題が市場を揺るがす中、NvidiaはAIチップ分野での優位性と半導体関税除外の恩恵を背景に、投資家からの信頼を維持している。

米国による報復関税の90日間停止、中国向け関税の影響、そして今後のAI拡散ルールの導入といった政策的変数を抱えながらも、Nvidiaはデータセンター収益の急増と高水準の利益率を維持し、成長性を実証している。市場アナリスト43名中37名が「強い買い」を推奨し、目標株価も現在価格から大幅な上昇余地を示している中、同社の株式は短期の不確実性よりも中長期の競争優位性が際立つ状況といえる。

関税を巡る政策の変動とNvidiaの立ち位置

Altimeter CapitalのCEOであるブラッド・ガーストナーは、Nvidiaが米中間の関税政策による混乱を乗り越える立場にあると断じ、同社株を15%増やす判断を下した。4月初旬に発表された「解放の日」関税では、テクノロジー全般に対して新たな課税が示されたが、半導体は対象から除外されている。

この措置により、NvidiaはGPUやAIチップにおいて重要な競争力を保ちつつ、直接的なコスト増加を回避することが可能となった。また、4月9日にはトランプ大統領が報復関税(中国を除く)の90日間停止を発表し、短期的な市場の安定材料ともなっている。

一方で、中国市場への依存度が高いNvidiaにとって、125%に及ぶ中国向け関税は看過できない要因である。特に、売上全体の約13%を中国が占める状況下において、関税の再導入や制裁強化は中長期的なリスクとなり得る。現時点では、原材料としての半導体は除外対象だが、ボードや電源部品は依然として課税対象に含まれており、これが利益率を圧迫する懸念は残る。政策的な方向性が短期間で大きく転換する現状において、Nvidiaの立ち位置は戦略的に有利と評価されつつも、常にリスクと隣り合わせの局面にある。

AIチップ需要とNvidiaの構造的成長力

Nvidiaの成長性を支える根幹は、AIチップ市場における圧倒的な技術的優位と、複数の業界からの広範な需要にある。ガーストナー氏が言及したように、ChatGPTをはじめとする生成AI、そして自動運転やクラウドデータセンターにおけるNvidiaのGPUは、いずれも不可欠なインフラとなっている。

直近の決算では、売上高が393億ドルに達し、前年同期比で78%増加。特にデータセンター部門は90.6%の構成比を占め、前年比93%の伸びを見せた。このセグメントの急成長は、Blackwell GPUの商業的成功に支えられており、同製品は「史上最速の製品立ち上げ」と評価されている。

また、同社はLepton AIの買収を通じ、サプライチェーンの戦略的強化を図っており、製造面ではなく供給網全体の制御を重視する姿勢が鮮明である。ガーストナー氏が「GPUの需要は爆発的」と表現したように、半導体供給に制約がある中で、既に製品を安定供給できるNvidiaは、他社との差をさらに広げつつある。短期の政策リスクがあっても、構造的な需要の底堅さと競合を凌駕する技術開発力が、同社の成長を実質的に支えている状況にある。

市場評価とバリュエーションの乖離

Nvidiaの現在の市場評価は、過去のPER水準と比較して割安との見方が強まっている。現在の予想PERは21.29倍であり、過去5年間の平均である47.75倍を大きく下回っている。これは、同社が持つ将来的な成長ポテンシャルに対して、市場が関税や地政学的リスクを過度に織り込み過ぎている可能性を示唆している。アナリスト43名のうち、37名が「強い買い」、2名が「やや買い」、4名が「保有」としており、目標株価の平均は176.15ドル。現在価格から約54%の上昇余地があるとされる。

このような市場の見方は、短期的な懸念材料を勘案しつつも、Nvidiaの根本的な競争優位性に対する信頼の表れである。今後、仮に中国向け関税が再導入された場合でも、構造的な成長が続けば、割安とされた水準が再評価される展開は十分に想定される。

ただし、半導体に特化した新たな関税導入が現実となれば、サプライチェーンへの影響や価格転嫁の必要性が再浮上することになるため、引き続き政策動向には慎重な監視が求められる。長期投資家にとっては、現在の価格水準が将来的なリターンの起点となり得る局面とも言えるだろう。

Source:Barchart.com