2025年、S&P500の急落を背景に金価格が過去最高を更新し、安全資産としての注目が高まる中でも、ウォーレン・バフェットは一貫して金ではなく株式への投資姿勢を崩していない。バフェットは金の非生産性と長期リターンの乏しさを理由にその保有を否定し、企業や不動産といった生産的資産への分散投資を重視する。過去10年間のリターンでも株式市場が金を凌駕しており、株式ETFなどによる市場全体への投資が有効とされる中、短期的な動揺に屈しない姿勢が改めて評価されている。

金の安全性と限界に対するバフェットの一貫した見解

ウォーレン・バフェットは、金が市場の混乱時に投資家の避難先として重宝されることを理解しつつも、それを長期的な投資対象とはみなしていない。彼は2011年のバークシャー・ハサウェイの株主宛ての手紙で、金には限定的な産業用途がある一方で、自己増殖性がないことを批判している。つまり、1オンスの金を何年保有しても、その価値は内在的に増加しないという観点が根底にある。

さらに、金はキャッシュフローを生まない資産であり、経済の生産活動や成長に直接貢献しないという点でも、バフェットの投資哲学とは相容れない。彼は実体経済と結びついた「生産的資産」への投資を重視し、それは企業、不動産、農地などを指す。これらは時間の経過とともに価値を生み、資本が成長していく循環をもたらすため、金のように価値が固定された資産とは一線を画している。

このような考え方は、市場が混乱しても動じない投資方針として評価されており、短期的な価格変動に過剰反応する市場心理とは一線を画している。金が2025年に過去最高値を更新した事実は、バフェットの見解と対照的であるものの、過去の実績に照らせば、長期的には株式などの生産的資産が優位であることを示す材料ともなる。バフェットの戦略は、資産の本質的価値と時間の力を信じる姿勢に裏打ちされている。

株式リターンの実績が金を凌駕する構造的根拠

2025年のS&P500の急落を受け、投資家の一部は金へ資金をシフトさせたが、過去10年にわたる株式市場のリターンは、金を大きく上回ってきた。配当再投資を含めたS&P500の平均年間リターンは約10%に達し、これは単に金を保有する戦略と比較して圧倒的に優れている。金の価格が上昇した場面であっても、株式市場が回復する局面を考慮すれば、長期の資本成長を重視する投資家にとっては依然として株式が選好される状況である。

モトリーフールの「Stock Advisor」は、2025年4月時点で820%という累積リターンを記録しており、同期間のS&P500の158%を大きく引き離している。このような実績は、市場全体の成長と企業の収益力を反映した投資戦略の有効性を裏付けている。また、S&P500を対象としたETF、たとえばSPDR S&P 500 ETF Trust(SPY)なども、低コストで広範な市場への分散投資を可能とし、リスク管理と成長の両立が期待される手段となっている。

市場は短期的には貿易戦争や金利変動といった外的要因に左右されるが、歴史的には常に回復してきた。したがって、市場の不確実性を理由に投資から退くことは、長期的な機会損失につながる可能性がある。バフェットが示すように、市場の変動に屈せず堅実に資産を運用することが、資産形成における最も効果的な戦略といえる。

Source:The Motley Fool