中国の愛好家フォーラムChiphellにおいて、未発表のAMD Radeon RX 9070 XTリファレンスカードの実機レビューが公開された。三連ファン構成の2.5スロット厚カードで、GPUにはグラフェンシートが採用されており、熱伝導パッドの交換後にはGDDR6メモリ温度の顕著な低下が確認された。
このカードはブラックマーケット経由で入手されたもので、公式発表されていない外観ながらもAMDの純正レンダリング画像に酷似している点が注目される。Time SpyやFurMark等のテスト結果からも、電力上限引き上げ後の挙動や冷却性能の改善効果が定量的に示されている。
現時点でRX 7000シリーズ向けのリファレンスデザインの公式提供は行われていないが、本カードは仮にそれが存在していた場合の設計指針を示唆するものとして、熱管理や構造の観点から興味深い先行事例となり得る。
グラフェンシートの採用と熱伝導パッドの品質が示す冷却設計の課題

Chiphellフォーラムに投稿された非公式レビューによれば、未発表のAMD Radeon RX 9070 XTリファレンスカードにはGPU冷却機構の一環としてグラフェンシートが搭載されていた。この素材は極めて高い熱伝導性を持つが、同カードに用いられていた熱伝導パッドの品質は高くなく、GDDR6メモリの高温化を引き起こす一因とされた。投稿者が独自に高性能パッドに交換したところ、Time SpyおよびFurMarkによる温度測定でメモリチップの温度が最大6度低下したというデータが得られている。
これらの結果からは、冷却素材そのものの選定と、GPUコアと周辺コンポーネントにおける冷却バランスの設計が極めて重要であることが浮き彫りとなる。また、グラフェンという先端素材の導入が単体で高い性能を保証するわけではなく、それを支える周辺部材との整合性と最適化が不可欠である。熱設計における技術的未完成さが明らかとなった今回の事例は、リファレンスカードにおける冷却設計の一層の成熟を促す機会といえるだろう。
ブラックマーケット経由で流通する未発表カードが示唆する製造流通の実態
今回のRadeon RX 9070 XTはAMDが公式に発表していないにもかかわらず、中国のフォーラム上で実機レビューが掲載されており、その入手経路は明確にはされていない。カード本体には旧Radeonロゴが使用されるなど、正式製品には見られない意匠も含まれており、いわゆるOEM向けないし評価用サンプルであった可能性が指摘される。これらのカードがブラックマーケットで個人に販売されている実態は、製造から流通の過程におけるセキュリティや管理体制の緩さを示している。
外観はAMDのレンダリング画像と非常に酷似しており、設計段階では公式に近い仕様で開発された可能性は排除できない。ただし、その設計が公式のリファレンスカードであるという裏付けはなく、現時点でAMDがRX 7000シリーズ向けにリファレンスモデルを展開する計画は確認されていない。企業秘密の流出や非公式流通が新製品の市場形成に影響を与えることは、製品の信頼性とブランド価値に直結する重大な懸念であり、今後の管理体制強化が求められる。
Founders Edition以降に変化した純正カードの価値とリファレンス設計の意義
かつてリファレンスカードは、ボードパートナーによるカスタムモデルに比べて性能や冷却性能で劣るとの評価が主流であった。しかし、NVIDIAがFounders Editionを投入し、AMDも液冷を採用したリファレンス設計を展開したことにより、純正カードの存在価値は再定義された。これらは基準性能を担保しつつ、ブランドの設計思想を直接伝える手段となり、ハイエンドユーザーの評価軸にも変化をもたらしている。
一方で、今回のようにAMDがRX 7000シリーズで公式リファレンスを提供していない状況は、純正設計の継承と進化という観点からは空白と捉えられる可能性がある。今回リークされたカードがその代替物である保証はないが、形状やファン構成、配色などが暗示する設計方針にはAMDの美学が垣間見える。純正カードは単なるハードウェアではなく、製品ライン全体の象徴であり、今後のGPU市場でその役割がどう位置付けられるかが問われている。
Source:VideoCardz.com