米中貿易戦争の激化により、Apple株が大幅に下落している。CNBCの著名アナリスト、ジム・クレイマーは、関税強化によってiPhoneなどの価格が急騰する可能性に警鐘を鳴らし、特に中国製造拠点への依存が大きなリスク要因であると指摘した。
Appleは新関税前に製品を空輸する緊急対応を実施し価格維持を試みるが、同社株は52週安値圏で推移し、市場には先行き不透明感が広がっている。こうした状況が続けば、Appleは巨大テック企業群の中で最も深刻な影響を受ける懸念がある。
Appleが直面する新関税の影響とその緊急対応策

Appleはトランプ前大統領が主導する米中関税戦争の再燃により、新たな輸入課税の影響を強く受けている。中国を主要製造拠点とする同社は、100%を超える関税対象となり、iPhoneなどの価格上昇リスクが顕在化している。ウォール・ストリート・ジャーナルの分析では、iPhone 16 Proの製造コストが550ドルから850ドル近くに跳ね上がる可能性が指摘された。これを受け、Appleは急遽アジアから5機分の製品を空輸し、関税適用前に在庫確保を図った。この措置により短期的な価格維持は可能とみられるが、恒常的な対策にはならない。
この動きから読み取れるのは、Appleのサプライチェーンがいかに地政学的リスクに晒されやすい構造であるかという点だ。今後も関税政策がエスカレートすれば、製造拠点の再配置や価格戦略の見直しが避けられない。特にAppleのように高価格帯の製品を展開する企業にとって、こうしたコスト増は競争力に直接響く要素となる。株主や市場が注視するのは、一時的な緩和策ではなく、継続的な安定供給体制と収益モデルの再設計である。
Apple株の下落とMag-7中での際立った弱さ
Appleの株価は関税問題を背景に52週レンジの下限付近で取引されており、200日単純移動平均線を下回るなどテクニカル面でも下落基調が顕著である。過去1ヶ月間でAppleは「Mag-7」と呼ばれる主要テック7社の中でも最も下げ幅の大きい銘柄となった。米国市場全体が揺れる中でも、特にAppleが投資家心理の不安定さを反映した象徴的存在となっているのは、中国依存度の高さと製品価格の影響を受けやすい事業構造に起因しているとみられる。
一部のアナリストは、現在の価格水準を「押し目買いの好機」と評価しているが、ジム・クレイマーは「最悪はこれから」との見解を示している。Appleが今後、政策動向に左右される経営リスクを減らさない限り、短期的な株価反発は限定的となる可能性がある。市場におけるAppleの存在感は依然として強いが、その影響力の裏側には構造的な脆弱性も隠されており、投資家は楽観視できない状況にある。製品の革新性だけでは乗り越えられない壁が、いまAppleの前に立ちはだかっている。
Source:Watcher Guru