AI市場の成長に乗り、NVIDIAとPalantirの株価は注目を集めているが、2025年に入りその動きに明確な差が表れている。NVIDIAは15.1%下落した一方、Palantirは21.5%上昇。PalantirのAIプラットフォーム「AIP」が民間企業への拡大を成功させ、顧客数は前年同期比43%増となった。一方で、米政府による予算削減の影響が懸念材料となり、成長の持続性には不透明感が残る。

NVIDIAはAI向けデータセンター需要を背景に強固なGPU市場支配を維持しつつ、PEG比0.85という割安水準が評価されている。BlackwellチップやHopperチップに対する継続的な需要により、投資家の期待も高まっている。Palantir株は依然高値圏にあり、短期的には慎重な見極めが必要とされる状況である。

NVIDIAを支える構造的優位 GPU市場独占とAIインフラ需要の波

NVIDIAは、世界のGPU市場で80%以上のシェアを維持しており、この支配力が同社の収益安定性と成長余地を支えている。特にCUDAソフトウェアは業界標準として位置付けられ、開発者の支持を集めている。AMDのROCmが対抗馬として存在するものの、CUDAからの移行はインフラ面でのコストや技術的なハードルが高いため、短期的な逆転は難しい構図にある。また、最新のBlackwellチップは大手テック企業による引き合いが強く、旧世代のHopperチップも引き続き市場で高い評価を受けている。

さらに、AIデータセンター向け投資は過去最大規模に達しており、今後数年で約2,500億ドルがクラウドインフラ整備に充てられる見通しだ。Microsoftが一部プロジェクトを見直したものの、AmazonやAlphabetが代替的な需要を創出し、NVIDIAの販売基盤は維持されている。加えて、PEGレシオが0.85という数値は、同社株が成長期待に対して依然として割安と見なされている証左である。このように、市場の変動を超えて中長期的な成長を見込める構造が、NVIDIA株の底堅さを支えている。

PalantirのAIP成長とリスク 民間拡大の加速と政府依存の危うさ

Palantir Technologiesは、AIプラットフォーム「AIP」の急速な普及を背景に、2024年第4四半期に顧客数を前年比43%増加させた。この成長は、同社が従来依存していた政府契約から脱却し、民間セクターへの進出を本格化させたことによるものである。AIPは生成AIを活用した意思決定支援機能により、多くの企業の業務効率化を可能とし、その評価はIDCやForresterといった調査機関からも高く評価されている。これにより、売上高は四半期で36%増、今期は前年比31%増という強気な見通しを示している。

しかしながら、最大顧客である米政府がソフトウェア予算を今後5年で年8%削減する方針を掲げたことは、成長継続に影を落とす。この構造的リスクに加え、Palantir株は将来収益に対して過剰評価されている懸念も強い。現在のフォワードP/Eレシオは165.49と非常に高く、2025年の利益成長率予測37%を織り込んでもなお投資妙味は薄い。株価は期待先行の色合いが濃く、事業目標に未達があれば急落リスクが高まる。顧客拡大というポジティブ要因はあるものの、持続可能性に関しては冷静な分析が求められる。

株価目標と評価格差に見る市場の温度差

証券会社の評価からも、NVIDIAとPalantirに対する市場の見方の違いが鮮明に表れている。Zacks Investment Researchによれば、NVIDIAの短期的な株価目標は従来の96.30ドルから176.15ドルへと82.9%引き上げられた。これは、同社のAIチップ需要が今後も堅調であるという市場の期待と、財務指標の安定性を織り込んだものと考えられる。一方、Palantirに対する株価目標の引き上げ幅は9.3%にとどまり、84.53ドルとされた。この控えめな評価は、収益成長への期待と株価水準との乖離に慎重な姿勢があることを示唆している。

両社のZacksランクも対照的であり、NVIDIAが「買い推奨」の2位であるのに対し、Palantirは「ホールド」とする3位にとどまっている。この評価差は単に業績の現状だけでなく、将来の収益性に対する信頼感の違いを反映している。投資家にとっては、このような市場の温度差を冷静に見極めた上で、成長性とリスクのバランスを取った投資判断が必要となる。特に、過熱感のある銘柄においては、期待と現実の乖離を慎重に検証する姿勢が重要である。

Source:yahoo finance