Appleが昨年のWWDCで発表したAI搭載の新Siriは、当初iOS 18と同時にリリース予定だったが、技術的・開発上の理由により延期されていた。新たな報告では、iOS 19とともに今秋登場する見通しが浮上している。

新Siriは、ユーザーのメール、写真、ファイル、画面表示内容などを理解し、文脈に応じた応答とアクションが可能になるなど、従来にない深いパーソナライゼーションが期待される。これにより、AppleはGoogleやOpenAIとの競争に再び本格的に加わる可能性がある。

AI搭載Siriのリリース延期とiOS 19への統合計画

Appleは2023年のWWDCで、AIを活用して大幅に進化したSiriを発表し、iOS 18と同時にリリースすると予告していた。しかし、2024年3月時点で同社はこの機能群の投入に遅延が生じていることを公式に認めており、具体的な時期を「来年中」とするに留めていた。

今回明らかになったのは、この“スマート化されたSiri”が2025年秋のiOS 19と同時に登場する可能性が高まっているという点である。リリースまでに15〜16か月の期間を要することになり、これはAppleにとっても異例の長期開発期間といえる。

特にAppleは、2023年以降、生成AI分野におけるGoogleやMicrosoftとの競争でやや後れを取っているとの指摘もある。そうした状況下で、Siriの刷新は単なる機能強化に留まらず、Appleの生成AI戦略全体における信頼回復の試金石となり得る。

Siriが目指す“個人最適化”と機能的進化の方向性

新たなSiriには、ユーザーの個人的文脈を理解し、それに基づいた応答や提案を行う能力が搭載される見込みである。具体的には、ユーザーのメール、メッセージ、ファイル、写真などに含まれる情報から学習し、行動の背景や意図を把握しようとする。

さらに、画面上のコンテンツをリアルタイムで分析し、ユーザーの操作意図に応じて他のアプリと連携した指示実行も可能になるという。これにより、従来の単一命令型アシスタントから脱却し、継続的な対話と行動のサポートを可能とする“セカンドブレイン”的存在へと進化することが期待されている。

ただし、こうした高度な個人最適化には、デバイス内処理とクラウド連携のバランス、そしてプライバシー保護との整合性が不可欠であり、Appleの設計哲学に照らしても慎重なアプローチが求められることは間違いない。

Siri再構築が意味するAppleのAI戦略の転換点

SiriのAI強化は単なる技術的刷新ではなく、AppleのAI戦略における方向転換を象徴する動きとも読み取れる。長年、音声アシスタントとしての革新性が乏しいとの批判を受けていたSiriは、他社のように大型言語モデル(LLM)を用いた積極的な進化を見せてこなかった。

しかし、今回の報道で示された新機能群は、まさにChatGPTやGeminiなどと同種の対話型AIアプローチを採用していることを暗示する。Appleは、既存のハードウェアに深く統合されたAI体験を武器に、プライバシーを重視しながらもスマート化を進めるという独自路線を追求する可能性がある。

一方で、こうした機能が本当にユーザーの生活を変える“知的存在”となるためには、機械学習の精度やコンテキスト処理能力において、既存の生成AIと同等かそれ以上のレベルに達する必要がある。その実現性が問われるのは、まさに今秋のSiri再デビューの成否にかかっている。

Source:GSMArena