Appleが2024年2月に投入したApple Vision Proの後継機「Apple Vision Pro 2」について、発売からわずか1年足らずで新たな噂が広まり始めている。報道によれば、Appleは高額な初代モデルの反省を踏まえ、1,500〜2,500ドルの範囲でより手頃な価格帯の新機種を計画しているという。

その実現に向けて、ディスプレイは3,380dpiの高解像度から1,500dpi程度にスペックを下げ、チップセットもMacグレードからiPhone向けのものへ置き換えが検討されている。加えて、EyeSightスクリーンの削除や、処理の一部をiPhoneやMacに外部委任する案も浮上しており、全体として大幅なコストダウンが進められているようだ。

こうした動きは、限られた富裕層向けにとどまった初代モデルから脱却し、より多くの一般層への訴求を狙うAppleの戦略転換とも読み取れる。拡大を続ける混合現実市場での主導権獲得に向け、今後の正式発表が注目される。

低価格帯モデルに向けた仕様変更と技術選定の動き

Apple Vision Proの次世代モデルに関する情報によれば、Appleはこれまでのプロ向け仕様から一転し、一般消費者層をターゲットにした低価格モデルの投入を検討している。報道では、視覚ディスプレイに用いられる素材として、従来の3,380dpi OLEDoS(OLED-on-Silicon)から、1,500dpiのGCS(Glass Core Substrate)OLEDへの置き換えが候補に挙がっており、解像度を抑えることで製造コストを大幅に削減する狙いがあるとされる。

さらに、MacグレードのSoC(System on Chip)から、iPhone用のプロセッサへの変更も視野に入っており、これによって電力効率の改善とコスト最適化が見込まれている。このような設計変更は、性能よりも市場拡張を優先する判断と捉えられ、Appleとしては初代Vision Proで得た知見を踏まえて、MR(複合現実)デバイスの普及促進に本格的に踏み出す姿勢を示していると言える。

ただし、性能の一部を犠牲にすることで初代モデルに見られた圧倒的な体験価値がどこまで維持されるかは依然として不透明であり、Appleのブランドイメージとユーザー期待との整合性が今後の焦点となる。

外部機器への処理依存とデバイス設計の再構築

Apple Vision Pro 2では、処理負荷の一部をヘッドセット本体から外部デバイスに分散する構成が検討されている。これにより、装着時の軽量化やバッテリー消費の最適化が図れる一方、接続するiPhoneやMacとの連携前提が使用条件となり、スタンドアロンデバイスとしての自律性には制約が生じる可能性がある。

特に、これまでのApple製品が強調してきた一体型エコシステムという価値に対して、ユーザーの受け止め方が分かれるだろう。また、EyeSightディスプレイの省略も報じられており、これは視線の可視化によるコミュニケーション支援というApple独自のUI設計思想においては大きな変化となる。

一連の簡略化は、価格帯を1,500〜2,500ドルに収めるための現実的な方策と見られるが、それにより初代Vision Proで評価された先進的体験の再現が困難となる懸念もある。Appleがどこまで“Pro”の名を冠する意義を守り抜くかが、今後の評価軸となろう。

Source:AppleInsider