Intelが中国市場において、ゲーミング向けプレビルトPCに独自のチューニング機能「Intel Performance Optimizations(IPO)」を初めて導入した。

これは、従来のオーバークロックと標準設定の中間に位置する調整済みプロファイルであり、保証対象のままパフォーマンス向上を実現する新たな試みである。Maxsun製の構成では、コアクロックの200MHz増加やDDR5-8400への対応により、フレームレートが約10%改善されるとの例が示されている。

一方、IPOの対象は現段階でOEMおよびSIに限定され、一般市場への展開時期や具体仕様は明らかにされていない。Arrow Lakeのパフォーマンス低下が指摘される中、IPOの登場はその挽回策と目されるが、同プログラムがグローバル展開に発展するかどうかは現時点で不透明である。

中国市場限定で展開されるIPOの技術的特徴と性能向上の実例

Intelが発表した「Intel Performance Optimizations(IPO)」は、従来の手動オーバークロックと標準仕様の中間に位置付けられる新しいパフォーマンスチューニング手法である。IPOは、CPUのPコア、Eコア、リングバス、D2Dインターコネクト、そしてRAMのタイミングや転送速度に調整を施し、パフォーマンスを高めつつ安定性と保証を両立する点が特長である。

中国のMaxsunが販売するプレビルトPCでは、IPOによってCPUクロックが200MHz上昇し、メモリもDDR5-8000からDDR5-8400に引き上げられた結果、ゲームのFPSが約10%向上したという事例が報告された。

この技術は、AMDのPBOやXMPプロファイルと同様の目的を持ちながらも、保証範囲内に留めた設計であり、エンスージアスト層への訴求力を維持しながら、より幅広い利用者に対しても導入のハードルを下げている。

なお、現在のところこの技術は中国国内のOEMやSI向けに限定提供されており、グローバル展開の詳細や一般消費者向け提供については示されていない。この制限的な提供範囲は、あくまでパイロット段階にある可能性を示唆しているが、正式なコメントは確認されていない。

Arrow Lakeの失速とIPOの補完的役割への期待

Arrow Lakeはその発表当初、MCM(マルチチップモジュール)構造の採用や新アーキテクチャの導入により大きな期待を集めたが、実際の製品性能は一部シナリオで前世代のRaptor Lakeに及ばず、失望感を招いた。

主な要因には、メモリコントローラーが別タイルに配置されたことによるレイテンシーの増加や、リングバスのクロックが従来比で約20%低下していた点が挙げられる。また、2025年1月までにIntelが複数のマイクロコードとCSMEファームウェアによる修正を提供したものの、ベンチマーク上の改善幅は限定的であった。

このような背景において、IPOはArrow Lakeの性能を底上げする手段として登場した。Intelが今後、Arrow Lakeに対して「オプトイン形式のBIOSプリセット」を提供するという未確認情報もあり、IPOがその布石である可能性も取り沙汰されている。

明確な計画は示されていないが、システムインテグレーターに対しArrow Lakeの採用価値を高める戦略の一環としてIPOが活用される可能性は否定できない。Intelにとっては、競合AMDのRyzenシリーズに対抗する上で、再評価を促す技術的打開策となることが期待されている。

Source:Tom’s Hardware