半導体とインフラソフトウェアを手がけるBroadcom(AVGO)は、米中間の報復関税措置により株価が一時15%下落したものの、その後の1週間で20%超の急反発を見せた。同社は売上の約2割を中国市場に依存しており、関税引き上げによるサプライチェーンの混乱と利益率悪化の懸念が浮上している。

一方、Broadcomは100億ドル規模の自社株買い発表と、AI半導体・ソフトウェア需要の拡大を背景とした予想超えの決算で投資家心理を回復させた。第1四半期の売上は149.2億ドル(前年比24.7%増)、純利益は55億ドルとなり、AI関連売上は77%増の41億ドルに達した。アナリストの大半が同銘柄を「強く買い」と評価しており、今後の見通しには一定の期待が残るが、地政学的リスクの影響は依然として不透明である。

関税戦争下で露呈するBroadcomの構造的脆弱性と収益依存の偏り

Broadcomはグローバルな半導体およびソフトウェア供給企業として成長してきたが、その売上構成は地政学的リスクに対して脆弱である。特に全体収益の約20%を中国市場に依存する構造は、今回の米中間での関税強化措置により明確なリスク要因として浮かび上がった。

2025年4月の報復関税応酬では、中国向け関税が125%へ引き上げられたことで、同市場での販売価格競争力の低下や供給コストの増大が懸念される。加えて、原材料調達および物流ルートに生じた混乱も、短期的な利益率の圧迫につながる可能性がある。

これらの影響は、単なる短期的業績の変動にとどまらず、Broadcomが中長期的に見直すべき戦略的課題を内包している。特にハードウェア製造部門の地域的分散や、中国依存の是正策が問われる局面に入っている。現在の事業ポートフォリオにおけるリスクヘッジの不足が、急激な外部環境の変化に対する脆弱性を顕在化させており、同社のグローバル戦略に対して再構築の必要性が生じていると言える。

自社株買いと堅調な業績が示す資本政策の巧妙さとAI戦略の実効性

Broadcomは急落した株価に対し迅速に100億ドル規模の自社株買いプログラムを打ち出すことで、株主還元姿勢を明確に示した。この資本政策は年末まで継続予定であり、市場動向やM&A動向を勘案しながら機動的に実施される。

加えて、3月6日に発表された第1四半期決算では売上が149.2億ドル、純利益が55億ドルといずれも市場予想を上回る内容であった。特筆すべきはAI半導体ソリューションの売上が前年同期比77%増の41億ドル、インフラソフトウェアも47%増の67億ドルに達した点であり、生成AI需要を的確に捉えた成果と評価されている。

このような業績と財務対応の両立は、同社の事業運営能力と市場先読み力の高さを裏付けるものである。ただし、こうした成果が持続可能であるかは、今後の技術革新と市場の受容度に依存する部分も大きい。生成AI関連分野の競争激化や規制環境の変化が将来的に障壁となり得るため、現在の躍進が一過性にとどまることなく、収益構造全体に持続的貢献を果たせるかが注視される。実行力のある資本政策と成長分野への投資配分の的確さが、今後の株主価値創出の成否を分けることになる。

Source:Barchart